Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 中医協第649回|iPS細胞製品など再生医療5品目の保険適用案を解説
Transcript
- 0:00SPEAKER_00: あの、
- 0:00SPEAKER_00: 最新のスマートフォンを1990年の分厚い家電カタロガに
- 0:05SPEAKER_00: 無理やり載せようとしている場面をちょっと想像してみて
- 0:07SPEAKER_00: ほしいんです。はい、
- 0:08SPEAKER_01: それかなり無茶ですよね。ええ、
- 0:11SPEAKER_00: これ電話のページに入れるべきか、
- 0:13SPEAKER_00: それともパソコンのページにするか、
- 0:15SPEAKER_00: 編集者は絶対に頭を抱えるはずなんですよ。で、
- 0:19SPEAKER_00: 実は今、
- 0:19SPEAKER_00: 日本の医療保険制度でこれと全く同じことが起きていて。
- 0:23SPEAKER_00: そうなんですよね、
- 0:24SPEAKER_00: まさにそういう状況です。
- 0:25SPEAKER_00: ですよね。
- 0:26SPEAKER_00: なので、
- 0:27SPEAKER_00: 今回の深掘りでは、
- 0:29SPEAKER_00: 中医協の資料をもとに、
- 0:30SPEAKER_00: 最新の再生医療等の製品が
- 0:33SPEAKER_00: どうやって既存の古いルールに仕分けられているのか、
- 0:36SPEAKER_00: あなたと一緒に読み解いていきたいと思います。はい、
- 0:38SPEAKER_01: よろしくお願いします。
- 0:40SPEAKER_01: 非常に象徴的な状況というか、
- 0:42SPEAKER_01: 再生医療という全く新しいテクノロジーに対して、
- 0:46SPEAKER_01: 今の保険制度にはまだ専用の枠がないんですよ。
- 0:49SPEAKER_01: ないんですよね。だから暫定的に既存の医薬品か
- 0:53SPEAKER_01: あるいは医療機器のどちらかに当てはめるしかないという
- 0:56SPEAKER_01: 現状があります。
- 0:57SPEAKER_00: そこで今回示された5つの最先端製品を見ていて、
- 1:01SPEAKER_00: 私すごく不思議だったことがあるんです。
- 1:03SPEAKER_00: 何でしょうか。
- 1:04SPEAKER_00: 例えば、
- 1:04SPEAKER_00: iPS細胞から作った心筋細胞シートのリハートは
- 1:08SPEAKER_00: 医療機器に分類されましたよね。はい、
- 1:10SPEAKER_00: そうですね。
- 1:11SPEAKER_00: でも同じようにシート状になっているアロステムシートは
- 1:14SPEAKER_00: 医薬品扱いなんですよ。
- 1:16SPEAKER_00: なんかどちらも細胞をシート状にした
- 1:18SPEAKER_00: ものじゃないですか。
- 1:19SPEAKER_00: なぜこんな運命の分かり道ができるんですか?
- 1:22SPEAKER_01: なるほど。
- 1:23SPEAKER_01: 分類の鍵になるのは
- 1:25SPEAKER_01: 製品の見た目じゃなくて体内での作用とその使われ方
- 1:29SPEAKER_00: なんです。作用と使われ方?
- 1:32SPEAKER_01: ええ。リハートの場合、
- 1:35SPEAKER_01: 海峡手術で心臓の表面に直接ペタッと
- 1:38SPEAKER_01: 貼り付けるんですね。
- 1:39SPEAKER_01: はいはい。
- 1:39SPEAKER_01: この物理的に心臓の動きをサポートするという使い方が
- 1:43SPEAKER_01: 既存のペースメーカーなんかの医療機器に近いと
- 1:46SPEAKER_01: 判断されたんです。
- 1:47SPEAKER_00: なるほど。
- 1:48SPEAKER_00: 物理的なサポート
- 1:49SPEAKER_00: だから医療機器なんですね。
- 1:51SPEAKER_01: そうなんです。
- 1:52SPEAKER_01: 一方でアロステムシートは皮膚が
- 1:55SPEAKER_01: 剥がれてしまう表皮水泡症という重い病気の治療に
- 1:58SPEAKER_01: 使われるんですけど、
- 2:00SPEAKER_01: こっちは細胞が成長因子を出して傷の治りを促すんです
- 2:04SPEAKER_01: よ。
- 2:05SPEAKER_00: あーなるほど。成分が浸透して効くから薬と同じだと?
- 2:09SPEAKER_01: まさに。
- 2:10SPEAKER_01: その薬理的な作用が
- 2:11SPEAKER_01: 医薬品と同じだとみなされたわけです。
- 2:14SPEAKER_00: ちょっと待ってください。
- 2:15SPEAKER_00: じゃあパーキンソン病向けのアムシェプリとか脳損傷に
- 2:19SPEAKER_00: 使う悪語はどうなるんですか?
- 2:21SPEAKER_00: はい。脳に直接細胞を移植するって聞くと、
- 2:24SPEAKER_00: なんか物理的に何かを埋め込む医療機器のようにも
- 2:27SPEAKER_00: 思えますけど。あ、
- 2:28SPEAKER_01: 確かに移植という行為自体は物理的なんですけど、
- 2:32SPEAKER_01: 実はこれらも医薬品なんです。
- 2:34SPEAKER_00: え、そうなんですか?
- 2:35SPEAKER_01: はい。なぜかというと、
- 2:37SPEAKER_01: 脳に定着した細胞が
- 2:38SPEAKER_01: ドパミンとか細胞間のメッセンジャーになる
- 2:41SPEAKER_01: サイトカインといった物質を自ら分泌し続けるから
- 2:45SPEAKER_01: なんですよ。
- 2:46SPEAKER_01: その放出された物質が神経の修復を促すので、
- 2:50SPEAKER_01: やはり医薬品扱いになります。
- 2:53SPEAKER_01: ゾルゲンスマ水中という製品も既存の点滴と同じ成分
- 2:56SPEAKER_01: だから医薬品という整理ですね。あー、
- 2:59SPEAKER_00: つまり頭蓋骨の中に小さなペースメーカーを
- 3:02SPEAKER_00: 置いてるんじゃなくて、
- 3:03SPEAKER_00: 極小の製薬工場を直接脳内に建設するような
- 3:07SPEAKER_00: イメージですね。
- 3:08SPEAKER_00: まさにそういうことです。
- 3:09SPEAKER_00: それなら確かに薬の働きですね。でも、
- 3:13SPEAKER_00: ここで一つ大きな疑問があるんですよ。
- 3:16SPEAKER_00: 医薬品として扱うのはいいとして、
- 3:19SPEAKER_00: 通常の薬って開発から承認まで平気で10年とかかかります
- 3:24SPEAKER_00: よね。
- 3:24SPEAKER_01: かかりますね。
- 3:25SPEAKER_01: かなり長いです。
- 3:26SPEAKER_00: 今まさに心臓や脳の機能が落ちているあなたが
- 3:30SPEAKER_00: 患者だとしたらそんなに待てないじゃないですかこの
- 3:33SPEAKER_00: 未知の製品たちはどうやって迅速に現場へ出てくるんです
- 3:36SPEAKER_01: かそこで日本が導入しているのが7年の条件
- 3:41SPEAKER_01: および期限付き承認という特別な枠組みなんです
- 3:44SPEAKER_01: 生きた細胞を使う製品ってどうしても品質にばらつきが
- 3:48SPEAKER_01: 出やすくて本当に効くのかどうか通常の薬と同じレベルで
- 3:53SPEAKER_01: データを揃えるには膨大な時間がかかるんですよ
- 3:55SPEAKER_01: なるほど。だからこそ、
- 3:57SPEAKER_01: 少数のデータから
- 3:58SPEAKER_01: でも有効性が推定できれば、
- 4:01SPEAKER_01: とりあえず現場で使えるようにするんです。
- 4:03SPEAKER_01: 先ほどのリハートも、
- 4:04SPEAKER_01: 実はわずか8例の試験データで早期承認されています。
- 4:08SPEAKER_00: ただ8例ですか。
- 4:09SPEAKER_00: それはいくらなん
- 4:10SPEAKER_00: でも少なすぎませんか。
- 4:11SPEAKER_01: 驚きますよね。
- 4:13SPEAKER_00: それって
- 4:13SPEAKER_00: つまり、
- 4:13SPEAKER_00: 仮免許みたいなものですよね。
- 4:16SPEAKER_00: とりあえず行動に出ることは許すけど、
- 4:18SPEAKER_00: 実際に運転しながら7年以内に本当に安全で効果が
- 4:23SPEAKER_00: あるとデータで証明しなさいっていう。はい。
- 4:26SPEAKER_00: できなければ本免許を与えずに取り消すよと。ええ、
- 4:30SPEAKER_01: その仮免許という表現がぴったりだと思います。ただ、
- 4:33SPEAKER_01: 仮免許
- 4:34SPEAKER_01: だからこそ条件は非常に厳しいですよ。
- 4:37SPEAKER_01: そうなんですか。はい。
- 4:39SPEAKER_01: iPS細胞を使っているため、
- 4:41SPEAKER_01: どうしても未知の眼科リスクなどがゼロでは
- 4:44SPEAKER_01: ないんですね。ああ、
- 4:45SPEAKER_01: なるほど。
- 4:46SPEAKER_01: そのため、
- 4:47SPEAKER_01: 定期的なMRI検査で細胞が
- 4:49SPEAKER_01: 異常増殖していないか監視することが
- 4:52SPEAKER_01: 義務付けられています。
- 4:53SPEAKER_00: 結構厳重ですね。ええ。
- 4:55SPEAKER_01: それにこの製品を使えるのは対象疾患の知識が
- 4:59SPEAKER_01: 豊富で設備の整った限られた病院の医師だけです。
- 5:03SPEAKER_01: 早く届けることと安全性を担保することのギリギリの
- 5:07SPEAKER_01: バランスをとっているわけです。
- 5:08SPEAKER_00: なるほど。
- 5:09SPEAKER_00: 極小の製薬工場を仮免許の状態でいかに早く
- 5:14SPEAKER_00: そして安全にあなたのもとへ届けるか。
- 5:17SPEAKER_00: その裏側にある緻密なルールの設計が見えてきました。
- 5:20SPEAKER_01: はい。
- 5:21SPEAKER_01: そしてこの現状は、
- 5:22SPEAKER_01: 医療の未来についてある重要な事実を
- 5:25SPEAKER_01: 突きつけているんです。
- 5:26SPEAKER_00: と言いますと?
- 5:27SPEAKER_01: 細胞を移植して根本から治してしまうような、
- 5:31SPEAKER_01: いわゆる1回限りの治療がこれから
- 5:33SPEAKER_01: のスタンダードになろうとしているということです。
- 5:36SPEAKER_00: 確かに。
- 5:37SPEAKER_00: 今の医療保険制度って、
- 5:39SPEAKER_00: 高血圧の薬みたいに毎月薬を飲み続けることを前提に
- 5:43SPEAKER_00: 作られていますよね。
- 5:44SPEAKER_01: そうなんですよ。
- 5:45SPEAKER_01: 継続的な治療が前提なんです。もし、
- 5:48SPEAKER_00: たった1回の治療で一生治るとしたら、
- 5:51SPEAKER_00: その1回の奇跡に今の古いルールは
- 5:54SPEAKER_00: どうやって適切な値段をつけるべきなんでしょうか?
- 5:56SPEAKER_01: そこが最大の課題ですね。
- 5:59SPEAKER_00: あの1990年の家電カタログには間違いなくその答えは
- 6:03SPEAKER_00: 載っていません。
- 6:06SPEAKER_00: この新しいテクノロジーの価値をどう評価するのか、
- 6:09SPEAKER_00: ぜひあなたも考えてみてください。