Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 【中医協第655回】ケサンラ・ゼップバウンドの費用対効果評価をやさしく解説
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- 0:00SPEAKER_01: 車の燃費を計算するときって、
- 0:02SPEAKER_01: 1リットルで何キロ走れるかっていうのをかなりシビアに
- 0:05SPEAKER_01: 見るじゃないですか。
- 0:07SPEAKER_00: 数字が全てというか、
- 0:08SPEAKER_00: すごく合理的な世界ですよね。
- 0:10SPEAKER_01: そうなんです。でも、
- 0:12SPEAKER_01: もしその計算対象が車のガソリンじゃなくて、
- 0:15SPEAKER_01: 人の命とか健康だったとしたらどうでしょう。
- 0:18SPEAKER_00: なかなかシビアな話になってきますね。
- 0:21SPEAKER_01: ですよね。
- 0:22SPEAKER_01: 人の命に値段をつけるって、
- 0:23SPEAKER_01: なんか少し冷たく聞こえるかもしれないんですけど、
- 0:26SPEAKER_01: でも実は
- 0:27SPEAKER_01: これ限られた公的医療制度を守るための究極の
- 0:31SPEAKER_01: バランサーなんですよね
- 0:32SPEAKER_01: 欠かせない仕組みです今回の私たちの深掘りミッションは
- 0:36SPEAKER_01: まさにその舞台裏です
- 0:38SPEAKER_01: 今回ピックアップする資料は中医協
- 0:40SPEAKER_01: つまり中央社会保健医療協議会による高額医薬品の
- 0:45SPEAKER_01: 費用対効果評価についてです対象は
- 0:48SPEAKER_01: アルツハイマー病治療薬のケサンラと肥満症治療薬の
- 0:52SPEAKER_01: ゼップバウンド
- 0:53SPEAKER_00: あなたが
- 0:54SPEAKER_00: 将来関わるかもしれない医療費の裏側を探る非常に重要な
- 0:58SPEAKER_00: テーマですね。
- 0:59SPEAKER_01: 本当に。
- 1:00SPEAKER_01: そのバランサーの目盛りとなるのが
- 1:02SPEAKER_01: 評価の基本ルールなんですけど、
- 1:04SPEAKER_01: そもそもその命とか健康の価値ってどうやって数字に
- 1:07SPEAKER_01: するんですか?
- 1:08SPEAKER_01: ちょっと想像がつかないというか。
- 1:10SPEAKER_00: そこで登場するのが
- 1:12SPEAKER_00: クオーリーとアイサーという2つの指標なんですね。
- 1:16SPEAKER_00: クォーリーっていうのは
- 1:17SPEAKER_00: 生存年数に元気で過ごせるかどうかの生活の質、
- 1:21SPEAKER_00: いわゆるQOLを掛け合わせたものなんです。
- 1:23SPEAKER_01: あーなるほど、
- 1:25SPEAKER_01: 長く生きられるだけじゃなくてその質の
- 1:27SPEAKER_01: 掛け算なんですね。
- 1:28SPEAKER_01: その通りです。そしてもう一つのアイサーは
- 1:31SPEAKER_01: その1コーリーを余分に獲得するためにいくら追加で
- 1:36SPEAKER_01: 費用がかかるかを示すんです。
- 1:38SPEAKER_01: このアイサーの数値が低いほどコスパが
- 1:40SPEAKER_01: 良いと判断されるわけです。
- 1:42SPEAKER_00: はいはい健康でいられる時間と質を数値化して
- 1:45SPEAKER_00: そのコスパを見るんですね
- 1:47SPEAKER_00: でえーっと肥満症治療薬のゼップバウンドは
- 1:51SPEAKER_00: このアイサーが200万円未満と評価されて価格は
- 1:55SPEAKER_00: 末置きになりましたと
- 1:56SPEAKER_01: 比較的スムーズに決まりましたね
- 1:58SPEAKER_00: でもここで一つ疑問なんですけど企業側が
- 2:02SPEAKER_00: 最初に出したデータに対して専門組織が
- 2:05SPEAKER_00: いや類似薬の右合尾と同じ基準値を使うべきだって
- 2:09SPEAKER_00: わざわざ修正を入れてますよね
- 2:10SPEAKER_00: はい資料にありましたこれなんで第三者が
- 2:14SPEAKER_00: 介入してまで数値を述す必要が
- 2:15SPEAKER_00: あったんですか?
- 2:17SPEAKER_01: それはですね、
- 2:18SPEAKER_01: 企業側が
- 2:18SPEAKER_01: 治療を始める前の患者さんのQOLの値を本来より
- 2:23SPEAKER_01: かなり低く見積もっていたからなんです。
- 2:25SPEAKER_01: BMI35以上の患者さんの数値をですね、0.
- 2:28SPEAKER_01: 317と設定していまして。ああ、
- 2:31SPEAKER_00: なるほど。
- 2:32SPEAKER_00: スタート地点の数値をわざと低く設定しておけば、
- 2:35SPEAKER_00: 治療後の数値が少し上がるだけでも。
- 2:37SPEAKER_00: そうなんです。
- 2:38SPEAKER_01: 数学的には劇的に改善したように見せることができます
- 2:42SPEAKER_01: よね。
- 2:42SPEAKER_01: なので第三者機関が
- 2:44SPEAKER_01: その不自然なギャップを客観的なデータで適正な位置に
- 2:47SPEAKER_01: 引き戻したということなんです。いや、
- 2:49SPEAKER_00: それって要するにダイエット食品の広告とかでビフォーの
- 2:54SPEAKER_00: 写真を撮るときにわざとお腹を膨らませて変化を大げさに
- 2:57SPEAKER_00: 見せるような手口ですよね。
- 2:59SPEAKER_01: まあまさにその例えの通りですね。
- 3:01SPEAKER_01: それを専門機関が冷静に見抜いたってことですか?
- 3:04SPEAKER_00: はい。ゼップバウンドの場合は体重っていう目に見える変換
- 3:08SPEAKER_00: なので、
- 3:09SPEAKER_00: まだ評価がしやすい部分があったんです。
- 3:11SPEAKER_01: 確かに。
- 3:12SPEAKER_01: でももう一つのアルツハイマー病治療薬、
- 3:15SPEAKER_01: ケサンラの場合は
- 3:17SPEAKER_01: 認知機能の低下っていう目に見えにくい
- 3:20SPEAKER_01: ものじゃないですか。
- 3:21SPEAKER_01: こちらではかなり激しい議論が起きたって資料にあります
- 3:24SPEAKER_01: けど。
- 3:25SPEAKER_00: そうなんです。
- 3:26SPEAKER_00: ケサンラの場合、
- 3:27SPEAKER_00: 患者さんの認知機能を測るMMSEというテストがあるんです
- 3:31SPEAKER_00: が、
- 3:32SPEAKER_00: それで20点から21点だった集団に限り、
- 3:35SPEAKER_00: アイサーが
- 3:35SPEAKER_00: 1000万円以上という非常に悪い評価になりまして。
- 3:39SPEAKER_01: 1000万円以上、
- 3:40SPEAKER_01: それは高いですね。はい。
- 3:42SPEAKER_00: それで価格引き下げの対象になったんです。
- 3:45SPEAKER_00: 全体荷重で約4%の引き下げ資産ですね。
- 3:49SPEAKER_01: ちょっと待ってください。
- 3:50SPEAKER_01: 患者全体の約20%に当たるその特定の点数の人たちだけ、
- 3:55SPEAKER_01: なんでそんなにコスパが
- 3:56SPEAKER_01: 悪いという判定になっちゃったんですか?
- 3:58SPEAKER_00: それは、
- 3:59SPEAKER_00: その進行度の患者さんにおいて、
- 4:01SPEAKER_00: 薬を使った場合の生活の質の改善、
- 4:03SPEAKER_00: つまりクオリーの伸びがですね、
- 4:05SPEAKER_00: 薬の高額なコストに見合うほど大きくなかったから
- 4:08SPEAKER_00: なんです。
- 4:09SPEAKER_01: 早期の段階とか他の治療法と比較して、
- 4:12SPEAKER_01: 費用対効果のバランスが崩れちゃうということですか?
- 4:15SPEAKER_00: ええ、そうした特異な層だったということですね。
- 4:18SPEAKER_01: 進行度によってコスパが変わるんですね。で、
- 4:22SPEAKER_01: さらに驚いたのが効果の持続期間なんですけど、はい。
- 4:25SPEAKER_01: 企業側は効果は18年続くって主張したのに、
- 4:29SPEAKER_01: 公的分析では、いや、
- 4:31SPEAKER_01: 投与終了後の効果はなしってバッサリ切られてますよね。
- 4:34SPEAKER_01: これってどうしてですか?
- 4:35SPEAKER_00: それをですね、
- 4:37SPEAKER_00: 企業側が
- 4:37SPEAKER_00: 18ヶ月以降の長期効果を証明する実際のデータを
- 4:41SPEAKER_00: 出せなかったからなんです。ああ、
- 4:43SPEAKER_01: データがないとダメだと。はい。
- 4:46SPEAKER_00: 公的医療費という国民の財産を使う以上、
- 4:49SPEAKER_00: 推測のデータだけで何十年分もの価値を
- 4:52SPEAKER_00: 認めるわけにはいきませんから。
- 4:54SPEAKER_00: そのため、
- 4:55SPEAKER_00: 公的機関は
- 4:55SPEAKER_00: 非常に保守的な判断を下さざるを得ない
- 4:58SPEAKER_00: 仕組みになっているんです。
- 4:59SPEAKER_01: まあ厳しいですけど、
- 5:01SPEAKER_01: 理にかなってますね。
- 5:02SPEAKER_01: ただ私が一番引っかかったのは、
- 5:05SPEAKER_01: 今回公的医療の立場が採用されて、
- 5:07SPEAKER_01: 家族の介護費用が計算から除外されたことなんですよ。
- 5:11SPEAKER_00: ねえ、
- 5:11SPEAKER_00: そこが大きなポイントですね。
- 5:13SPEAKER_01: ですよね。
- 5:14SPEAKER_01: だってアルツハイマー病の薬って患者さん本人は
- 5:18SPEAKER_01: もちろんですけど、
- 5:19SPEAKER_01: 家族の介護負担を減らすことに大きな価値が
- 5:22SPEAKER_01: あるんじゃないですか。
- 5:23SPEAKER_01: そこを無視しちゃうのは
- 5:24SPEAKER_01: なんかちょっとおかしくないですか。
- 5:26SPEAKER_00: まさにそこが現在の経済評価モデルの最大の限界なんです
- 5:30SPEAKER_00: よ。
- 5:31SPEAKER_00: 限界ですか。ええ。実は介護負担が
- 5:35SPEAKER_00: 減ることをクオリーとしてどう数値化するか、
- 5:38SPEAKER_00: その学術的なコンセンサスが
- 5:40SPEAKER_00: まだ世界的に確立していなくて。
- 5:43SPEAKER_01: じゃあ評価モデルに組み込むのが計算上難しすぎるから
- 5:46SPEAKER_01: 今回は見送られたってことですか?
- 5:49SPEAKER_00: おっしゃる通りです。計算が
- 5:50SPEAKER_00: 難しいという理由で見送らざるを得なかったんです。
- 5:53SPEAKER_01: そういうことですか。
- 5:55SPEAKER_01: いやー計算が難しいからといって現実にある価値が
- 5:58SPEAKER_01: 切り捨てられてるのってなんだかすごくモヤモヤします
- 6:01SPEAKER_00: ね。ええ。
- 6:03SPEAKER_00: 数字の世界だけで測りきれない価値をどう扱うかが
- 6:06SPEAKER_00: 今後の医療制度における本当に大きな
- 6:09SPEAKER_00: 課題になっています。
- 6:10SPEAKER_01: 今回の資料を深掘りしてみて、
- 6:12SPEAKER_01: あなたが将来関わるかもしれない高額な薬の価格は
- 6:16SPEAKER_01: 臨床試験のデータとこうしたシビアな経済モデルの
- 6:19SPEAKER_01: 攻めぎ合いで決まっているということが
- 6:21SPEAKER_01: よくわかりました。
- 6:22SPEAKER_00: そうですね。
- 6:23SPEAKER_00: 評価の仕組みを知ることはとても大切です。
- 6:26SPEAKER_01: 最初の車の燃費の話に戻りますけど、
- 6:29SPEAKER_01: 燃費だけを計算して運転する家族の安心感とか負担軽減を
- 6:34SPEAKER_01: 無視しているような状態ですよね。
- 6:36SPEAKER_01: 計算が難しすぎるっていう理由だけで、
- 6:39SPEAKER_01: 私たちは次世代の革新的な治療薬が
- 6:41SPEAKER_01: 持つ真の社会的価値を不当に低く
- 6:44SPEAKER_01: 見積もってしまっているのではないでしょうか。
- 6:46SPEAKER_01: このジレンマについてあなたはどう考えますか。