Latest / 岡大徳のポッドキャスト / iPS細胞由来心筋シート「リハート」保険適用へ|償還価格5,320万円
Transcript
- 0:00SPEAKER_00: 1回の治療で、
- 0:01SPEAKER_00: えーと、
- 0:02SPEAKER_00: 5320万円。
- 0:05SPEAKER_00: 家が一件買えてしまう価格の最新医療が、
- 0:09SPEAKER_00: 来年日本の保険適用になるんです。
- 0:11SPEAKER_01: すごい額ですよね。はい。
- 0:14SPEAKER_00: 今日の深掘りでは、
- 0:15SPEAKER_00: あなたと一緒に、
- 0:15SPEAKER_00: この驚愕の数字の裏側にある最先端医療の仕組みを
- 0:19SPEAKER_00: 解明していきます。
- 0:20SPEAKER_00: よろしくお願いします。
- 0:22SPEAKER_00: 今回取り上げるのは、
- 0:24SPEAKER_00: iPS細胞由来の心筋細胞シート、
- 0:27SPEAKER_00: リハートっていうものなんですけど、
- 0:29SPEAKER_00: これ一体どんな魔法の薬なんですか?
- 0:32SPEAKER_01: 魔法の薬って言いたくなる気持ちすごくよくわかります。
- 0:36SPEAKER_01: でもこれ、
- 0:36SPEAKER_01: 極めて現実的な最先端科学の結晶なんですよ。
- 0:40SPEAKER_00: 現実的ですか?
- 0:42SPEAKER_01: そしてその科学設定とか社会への導入プロセスには
- 0:46SPEAKER_01: ちょっと驚くような事実が隠されています。
- 0:49SPEAKER_00: なるほど。
- 0:50SPEAKER_00: じゃあまずはこのリハートが
- 0:52SPEAKER_00: どうやって効くのかってところなんですけど、
- 0:54SPEAKER_00: 資料によると心臓の表面に細胞のシートを移植するんです
- 0:59SPEAKER_00: よね。
- 1:00SPEAKER_00: これって
- 1:00SPEAKER_00: つまり、
- 1:01SPEAKER_00: 弱った心臓というエンジンそのものを新品に
- 1:03SPEAKER_00: 交換するんじゃなくて、
- 1:05SPEAKER_00: 微小で優秀な修理工たちを幹部に直接貼り付けて、
- 1:09SPEAKER_00: 内側からエンジンを直させるようなイメージですか?
- 1:13SPEAKER_01: その優秀な修理工っていう
- 1:15SPEAKER_01: 例えすごくわかりやすいですね。
- 1:16SPEAKER_01: まさにその通りです。
- 1:17SPEAKER_00: 本当ですか。
- 1:18SPEAKER_00: よかった。
- 1:18SPEAKER_01: 移植された細胞が
- 1:20SPEAKER_01: サイトカインと呼ばれる物質とか成長因子をじわじわと
- 1:25SPEAKER_01: 出して新しく血管を作らせたりするんです。
- 1:28SPEAKER_00: 血管を作る。
- 1:29SPEAKER_01: そうです。
- 1:30SPEAKER_01: それで心筋がカチカチに固くなるのを防いだりするんです
- 1:33SPEAKER_01: よね。
- 1:33SPEAKER_00: なるほど。
- 1:34SPEAKER_00: エンジンの部品を治すための潤滑油とか栄養を
- 1:38SPEAKER_00: 出し続けてくれるような感じですね。
- 1:40SPEAKER_01: まさに。
- 1:41SPEAKER_01: ここで重要なのは、これが
- 1:43SPEAKER_01: 拒絶性心筋症による重症心不全の患者さんに
- 1:47SPEAKER_01: 使われるという点なんですよ。
- 1:49SPEAKER_00: というと?
- 1:50SPEAKER_01: つまり、
- 1:51SPEAKER_01: 既存の薬とか手術といった標準治療では、
- 1:54SPEAKER_01: もう効果が出ない、
- 1:55SPEAKER_01: 他に選択肢がない患者さんにとって、
- 1:58SPEAKER_01: この内側からの修復アプローチっていうのは、
- 2:01SPEAKER_01: すごく革新的な意味を持っているんです。
- 2:03SPEAKER_00: なるほど。
- 2:04SPEAKER_00: それは確かに画期的ですね。
- 2:05SPEAKER_00: そうですね。
- 2:06SPEAKER_00: でもちょっと待ってください。
- 2:08SPEAKER_00: 5000万円以上もする治療なら、
- 2:10SPEAKER_00: 絶対に治るっていう完璧で膨大なデータがあるんです
- 2:14SPEAKER_00: よね、
- 2:14SPEAKER_00: やっぱり。
- 2:15SPEAKER_01: そこがですね、
- 2:16SPEAKER_01: この話の一番の驚くべきポイントなんですよ。
- 2:19SPEAKER_01: 実は国内の臨床試験の対象となったのは、
- 2:23SPEAKER_01: わずか8例のみなんです。え?
- 2:25SPEAKER_00: 8人ですか?
- 2:26SPEAKER_01: たったの。そうなんです。
- 2:28SPEAKER_00: 8人です。それで5000万円超えですか?
- 2:31SPEAKER_01: ちょっと信じられないんですけど。驚きますよね。ただ、
- 2:34SPEAKER_01: その8人全員で心機能分類っていう心不全の重症度が
- 2:38SPEAKER_01: 改善したという結果はしっかり出ているんです。
- 2:40SPEAKER_00: 全員改善はすごいですね。
- 2:43SPEAKER_01: さらに2人の患者さんでは、
- 2:45SPEAKER_01: 左室駆使率が5%以上改善しました。
- 2:48SPEAKER_00: ちょっと専門用語が出ましたけど、
- 2:50SPEAKER_00: その左室駆使率っていうのは
- 2:52SPEAKER_00: 具体的にどういうことなんですか?
- 2:54SPEAKER_01: 簡単に言うと、
- 2:55SPEAKER_01: 心臓が血液を全身に送り出すポンプの力、
- 2:58SPEAKER_01: これが目に見えて回復したということです。
- 3:00SPEAKER_01: 安全性についても死亡率は0%でした。
- 3:04SPEAKER_00: なるほど。
- 3:05SPEAKER_00: じゃあ効果はバッチリってことですね。いや、
- 3:07SPEAKER_00: ここで忘れてはいけないのが、
- 3:09SPEAKER_00: これは有効性が確認されたわけではなくて、
- 3:12SPEAKER_00: 一定の基準を満たしたとして有効性が
- 3:15SPEAKER_00: 推定された段階だということなんです。
- 3:17SPEAKER_01: えーと、
- 3:18SPEAKER_01: 推定ですか。
- 3:20SPEAKER_01: つまり聞く可能性が高いだろうっていう、
- 3:22SPEAKER_01: そういう状態ってことですか。
- 3:24SPEAKER_00: その通りです。
- 3:26SPEAKER_00: だからこそ、条件
- 3:27SPEAKER_00: 及び期限付き承認という特別な枠組みになっているんです
- 3:30SPEAKER_00: よね。ああ、
- 3:31SPEAKER_00: なるほど。承認された後も、
- 3:34SPEAKER_00: 目標75例の使用成績調査を続けて、
- 3:37SPEAKER_00: 本当に有効なのかを実際の医療現場で検証していく必要が
- 3:41SPEAKER_00: あるんです。いや、
- 3:43SPEAKER_01: まだ推定の段階なのに、
- 3:45SPEAKER_01: どうやって5320万円なんていう具体的な価格が
- 3:48SPEAKER_01: 決まったんですか?
- 3:49SPEAKER_01: そこ気になりますよね。
- 3:50SPEAKER_01: はい。なんか資料のこの部分すごく不思議なんですけど、
- 3:54SPEAKER_01: 全く新しいiPS細胞の治療なのに骨格筋由来っていう
- 3:58SPEAKER_01: 既存の手術のルールを当てはめたりしてますよね。
- 4:01SPEAKER_01: これってどういうことなんですか?
- 4:03SPEAKER_00: 実はそこが日本の保険制度の面白いところであり苦労が
- 4:08SPEAKER_00: 見える部分でもあるんです。
- 4:09SPEAKER_01: 苦労ですか?
- 4:11SPEAKER_00: この治療はまだ推定段階
- 4:13SPEAKER_00: なので、
- 4:13SPEAKER_00: 通常なら価格を上げる要因になる、
- 4:16SPEAKER_00: 画期的な効果があるといった有用性の評価は、
- 4:19SPEAKER_00: 将来正式な承認を受けるときまで持ち越されるんですよ。
- 4:23SPEAKER_01: え、
- 4:24SPEAKER_01: じゃあ今のこの5000万円という価格は
- 4:26SPEAKER_01: どうやって決まったんですか?
- 4:28SPEAKER_00: 似たような製品が他にないんですよね。
- 4:31SPEAKER_00: なので今回は製造にかかる原価から積み上げる方式が
- 4:34SPEAKER_00: 取られたんです。
- 4:35SPEAKER_01: 原価計算ですね?
- 4:36SPEAKER_00: はいそこに希少な病気向けということで市場性加算という
- 4:41SPEAKER_00: 10%のプラスだけが適用されてこの5320万円という架空が
- 4:47SPEAKER_00: 弾き出されたんです
- 4:47SPEAKER_01: なるほどそういう計算なんですね
- 4:49SPEAKER_01: でもその保険のルール当てはめが
- 4:52SPEAKER_01: 何というか強引というかと
- 4:55SPEAKER_01: 言いますと他人の細胞を入れることによる免疫拒絶を防ぐための
- 5:00SPEAKER_01: 免疫抑制剤の管理費用なんかも既存の枠に
- 5:04SPEAKER_01: 無理やり押し込んでいるように見えますああ、
- 5:07SPEAKER_00: そこ鋭いですね。
- 5:09SPEAKER_00: 日本の医療保険制度って、
- 5:10SPEAKER_00: どんなにSFのような最先端技術であっても、
- 5:14SPEAKER_00: 既に存在している法的な枠組みとか財務ルールの箱の中に
- 5:18SPEAKER_00: どうにかしてつなぎ止めないと保険として処理できない
- 5:21SPEAKER_00: 仕組みになっているんですよ。
- 5:22SPEAKER_01: へえ、
- 5:22SPEAKER_01: そうなんですか。
- 5:23SPEAKER_00: だからこそ、
- 5:24SPEAKER_00: 未知の治療法を既存の骨格筋細胞の手術とか既存の
- 5:29SPEAKER_00: 薬剤管理料という箱になんとかパズルのように
- 5:31SPEAKER_00: 当てはめているんです。
- 5:33SPEAKER_01: なるほど。
- 5:34SPEAKER_01: IPS細胞を使った再生医療っていうと、
- 5:37SPEAKER_01: なんか遠い未来の魔法みたいに聞こえますけど、
- 5:40SPEAKER_01: 実際は既存の保険ルールの箱に押し込んだり、
- 5:43SPEAKER_01: これから75人のデータを泥臭く集めたり、
- 5:46SPEAKER_01: すごく現実的で地道なプロセスなんですね。
- 5:50SPEAKER_00: 本当にそうですね。
- 5:52SPEAKER_00: あなたも今、SFが
- 5:53SPEAKER_00: 現実の社会システムに組み込まれていくその過渡期を
- 5:57SPEAKER_00: 目撃しているんです。
- 5:58SPEAKER_01: そう考えると、
- 5:59SPEAKER_01: ただ高いだけじゃなくて、
- 6:01SPEAKER_01: 新しい技術が
- 6:02SPEAKER_01: 社会に根付くための壮大な実験を見ているような気が
- 6:05SPEAKER_01: しますね。ええ、
- 6:07SPEAKER_00: まさに巨大なプロジェクトです。さて、
- 6:10SPEAKER_00: 今日ここまで深掘りしてきたわけですが、
- 6:12SPEAKER_00: 最後にあなたに少し考えてみてほしいことがあります。
- 6:15SPEAKER_01: はい。
- 6:16SPEAKER_01: 有効性が
- 6:17SPEAKER_01: まだ推定の段階である新しい治療法に5300万円を超える
- 6:22SPEAKER_01: 価格と価値をつけるこの社会システム。
- 6:25SPEAKER_01: あなたは
- 6:26SPEAKER_01: この未知の可能性に対する巨額の投資を人類の希望への
- 6:30SPEAKER_01: 前払いと捉えますかそれとも大きすぎるリスクと捉えます
- 6:34SPEAKER_00: かいや本当に深く考えさせられるテーマですねそうですね
- 6:39SPEAKER_01: 答えは決して一つではありません
- 6:41SPEAKER_01: ぜひあなた自身の視点で考えてみてください