Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 費用対効果評価で2品目が「効果同等」判定 中医協651回総会を解説
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- 0:00SPEAKER_01: 新薬が開発されたっていうニュースを聞くと、
- 0:02SPEAKER_01: それだけで画期的な効果があって世界が
- 0:05SPEAKER_01: 変わるなんて思いがちですよね。
- 0:08SPEAKER_00: 本当にそうですよね。
- 0:09SPEAKER_00: すごく期待しちゃいます。
- 0:11SPEAKER_01: でも実は、
- 0:12SPEAKER_01: その新薬の凄さに対して国が
- 0:15SPEAKER_01: いくら支払うかを決めるときって、
- 0:17SPEAKER_01: 私たちが想像する以上にかなりシビアな判断が
- 0:21SPEAKER_01: 下されているんです。
- 0:22SPEAKER_01: 今回は中立的な立場から
- 0:24SPEAKER_01: その裏側をじっくり分析していきましょう。
- 0:27SPEAKER_00: このテーマ本当に多くが深くて面白いんですよ今回は
- 0:31SPEAKER_00: ですね中医協という国の専門組織が
- 0:35SPEAKER_00: 行った費用対効果評価の解説記事を情報源として
- 0:39SPEAKER_00: 読み解いていきます
- 0:40SPEAKER_01: リスナーのあなたも毎月医療保険料を納めていますよね
- 0:44SPEAKER_01: だから決して他人事じゃないんです
- 0:47SPEAKER_00: 実は最近市場規模が
- 0:49SPEAKER_00: 100億円を超えるような注目の新薬に品目が
- 0:52SPEAKER_00: 既存の薬に対して追加的な有用性はない
- 0:56SPEAKER_00: つまり上乗せの価値はないと判定されてしまったんです
- 1:00SPEAKER_01: 100億円規模なのに上乗せの価値なしですか製薬企業と
- 1:05SPEAKER_01: 国が真っ向から対立する中で新薬の価格が
- 1:08SPEAKER_01: 本当にその価値に見合っているかを国が
- 1:11SPEAKER_01: どう見極めているのかまずは
- 1:13SPEAKER_01: 一つ目のケースについて教えてもらえますかまずは
- 1:15SPEAKER_00: 新型コロナ治療薬のパキロビットパックという薬の
- 1:20SPEAKER_00: ケースですね。
- 1:21SPEAKER_00: 結論から言いますと、
- 1:22SPEAKER_00: モルムピラビルという比較対象の既存薬に対して、
- 1:26SPEAKER_00: 効果は同等なのに値段が高い、
- 1:29SPEAKER_00: 費用増という厳しい判定が下されました。
- 1:33SPEAKER_01: 費用増ってことは、
- 1:34SPEAKER_01: つまりコストパフォーマンスが悪いってことですかね。
- 1:37SPEAKER_01: まさにそういうことです。企業側は
- 1:39SPEAKER_01: 有用性の根拠としてエピックHR試験というデータを
- 1:43SPEAKER_01: 提出したんですが、
- 1:45SPEAKER_01: このデータの中身が議論の的になったんですよ。
- 1:48SPEAKER_00: なるほど。
- 1:49SPEAKER_00: そのデータに何か問題があったんでしょうか。
- 1:52SPEAKER_01: 企業が提出したのはですね、
- 1:54SPEAKER_01: デルタ株が流行する前で、
- 1:57SPEAKER_01: しかもワクチンをまだ打っていない人たちを対象にした
- 2:00SPEAKER_01: データだったんです。
- 2:01SPEAKER_00: ちょっと待ってください。
- 2:02SPEAKER_00: それって例えるなら、
- 2:04SPEAKER_00: 最新スマホのセキュリティ性能をアピールするのに、
- 2:07SPEAKER_00: ガラケー時代の古いウイルスを持ち出して、
- 2:10SPEAKER_00: ほらこんなに防げます
- 2:11SPEAKER_00: って言っているようなものじゃないですか。
- 2:13SPEAKER_01: その例え、
- 2:14SPEAKER_01: すごくわかりやすいですね。
- 2:15SPEAKER_01: まさにその通りです。
- 2:16SPEAKER_01: ですよね。ウイルスの変異とか、
- 2:19SPEAKER_01: ワクチンの普及といった外的要因によって、
- 2:21SPEAKER_01: 評価の前提が完全に変わってしまっていたんです。
- 2:24SPEAKER_00: なるほど。
- 2:25SPEAKER_00: なるほど。
- 2:25SPEAKER_01: そのため、
- 2:26SPEAKER_01: 国側はオミクロン株が流行していて、
- 2:29SPEAKER_01: ワクチン接種も進んでいる現在の状況下で実施された
- 2:32SPEAKER_01: パノラミックっていう最新のデータを採用しました。
- 2:35SPEAKER_00: つまり、
- 2:36SPEAKER_00: 今現在のリアルな患者さんの状況に合わせたわけですね。
- 2:39SPEAKER_01: そうなんです。で、
- 2:41SPEAKER_01: この最新データで分析し直すと、
- 2:43SPEAKER_01: 入院や死亡を防ぐ効果に有意な差は認められません
- 2:47SPEAKER_01: でした。
- 2:47SPEAKER_01: そうなんですか。ええ、統計学的な調整オッツ比という数値で1.
- 2:53SPEAKER_01: 18だったんですが、
- 2:54SPEAKER_01: これは簡単に言うと、
- 2:55SPEAKER_01: 標準的な治療と比べて効果の差が小さすぎて、
- 2:59SPEAKER_01: 客観的に意味のある違いとは言えないレベルだった
- 3:02SPEAKER_01: ということです。
- 3:03SPEAKER_00: へえ、
- 3:03SPEAKER_00: データは鮮度が命だっていうことが
- 3:05SPEAKER_00: よくわかる事例ですね。
- 3:06SPEAKER_01: 本当にそうですね。
- 3:08SPEAKER_01: じゃあ、
- 3:08SPEAKER_01: データが古かったというケースから
- 3:11SPEAKER_01: ちょっと視点を変えまして、
- 3:13SPEAKER_01: もしデータ自体は正確でも、
- 3:15SPEAKER_01: 企業と国とで、
- 3:17SPEAKER_01: そもそも何が
- 3:18SPEAKER_01: 患者にとっての価値なのかっていう根本的な考え方が
- 3:21SPEAKER_01: 食い違ったらどうなるんですか?
- 3:22SPEAKER_00: そこがまさに2つ目の新薬、
- 3:25SPEAKER_00: アオイクリチューで起きた議論なんです。
- 3:27SPEAKER_01: アオイクリチューですか?
- 3:28SPEAKER_00: はい。
- 3:29SPEAKER_00: これは糖尿病の治療に使われるインスリン製剤なんです
- 3:32SPEAKER_00: が、
- 3:32SPEAKER_00: 最大の特徴は、
- 3:34SPEAKER_00: 毎日打っていた注射が
- 3:36SPEAKER_00: 週1回で済むようになるという点なんですね。おお、
- 3:39SPEAKER_00: それはすごい。
- 3:40SPEAKER_00: なんですけど、
- 3:41SPEAKER_00: こちらもHBA1Cという糖尿病の指標となる血糖値の差が
- 3:46SPEAKER_00: 臨床的に意味を持つほどの大きさでは
- 3:48SPEAKER_00: ないと判断されてしまって、
- 3:50SPEAKER_00: さらに低血糖の増加傾向も見られたため最終的に
- 3:55SPEAKER_00: 費用同等や費用増加と判定されました
- 3:58SPEAKER_01: いやちょっと待ってくださいよ毎日自分に注射を打た
- 4:01SPEAKER_01: なきゃいけないのが
- 4:02SPEAKER_01: 週1回で済むって患者さん本人とか介護するご家族に
- 4:06SPEAKER_01: とってめちゃくちゃ価値があるはずですよね
- 4:08SPEAKER_01: そう思いますよね日々の生活の負担が激減するのになぜそれが
- 4:12SPEAKER_00: 評価に直結しないんです
- 4:13SPEAKER_00: か企業側も全く同じ主張をしたんですよ。
- 4:16SPEAKER_00: 投与回数が減ることで生活の質が改善するとして、
- 4:20SPEAKER_00: DTSQという指標を提出しました。
- 4:23SPEAKER_00: ただですね、これは
- 4:24SPEAKER_00: 平たく言えば治療に対する患者さんの
- 4:27SPEAKER_00: 満足度アンケートのようなものでして、
- 4:30SPEAKER_00: 国はこれを厳格な費用対効果の評価には
- 4:33SPEAKER_00: 使えないと判断したんです。
- 4:34SPEAKER_01: 患者の満足度が高くてもダメなんですか?
- 4:37SPEAKER_00: なぜかというと、
- 4:39SPEAKER_00: 国は限られた医療予算を配分するために、
- 4:42SPEAKER_00: あらゆる病気の薬を公平に比較しなければならないから
- 4:45SPEAKER_00: です。
- 4:46SPEAKER_00: なるほど。
- 4:47SPEAKER_00: 例えば、
- 4:48SPEAKER_00: この糖尿病の薬の価値と全く別のがん治療薬の価値を同じ
- 4:53SPEAKER_00: 天秤にかけるためには、
- 4:54SPEAKER_00: 単なる満足度ではなくて、
- 4:56SPEAKER_00: 命の長さと質を掛け合わせた共通の厳密なものさしが
- 5:00SPEAKER_00: 必要になります。
- 5:02SPEAKER_00: 病気ごとに異なる満足度の指標を使ってしまうと客観的な
- 5:06SPEAKER_00: 比較ができなくなってしまうんですよ
- 5:07SPEAKER_01: なるほど経済的な価値として国全体で予算を割り振る
- 5:12SPEAKER_01: ためにはもっと普遍的な基準が必要だということですね
- 5:16SPEAKER_01: いやーかなりシビアな世界です
- 5:17SPEAKER_00: ただ国も医療現場の実態を完全に無視しているわけでは
- 5:22SPEAKER_00: ないんです
- 5:22SPEAKER_00: あそうなんですか企業の反論を受けた再評価で注射の
- 5:27SPEAKER_00: 回数が減ることで訪問看護の回数が
- 5:30SPEAKER_00: 月に1回か2回減るだろうといった実際の生活に即した
- 5:34SPEAKER_00: 前提条件の修正はしっかりと行われました
- 5:36SPEAKER_01: よかったです
- 5:38SPEAKER_01: 今回の2つの薬を通して見えてきたのは国側が
- 5:42SPEAKER_01: いかに冷静にある意味で冷酷なまでに厳格な分析を
- 5:46SPEAKER_01: しているかということですねそうですね
- 5:48SPEAKER_00: でもこの厳格なプロセスは
- 5:50SPEAKER_00: 決して新薬をいじめているわけではないんですと
- 5:53SPEAKER_00: 言いますとこれをお聞きのあなたが
- 5:56SPEAKER_00: 毎月払っている医療保険という、
- 5:58SPEAKER_00: 社会全体の大切な資源をどう守り、
- 6:01SPEAKER_00: 未来へつないでいくかという非常に重要な
- 6:04SPEAKER_00: システムそのものなんですよ。
- 6:06SPEAKER_01: 本当にその通りですね。
- 6:08SPEAKER_01: ただここで一つ考えさせられます。
- 6:10SPEAKER_01: ヘモグロビンA1Cの数値とか、
- 6:13SPEAKER_01: 入院率といった客観的なデータや共通の物差しには
- 6:17SPEAKER_01: どうしても現れにくい。
- 6:19SPEAKER_01: 患者や家族の利便性とか日々の安心感。
- 6:23SPEAKER_01: 今後私たちは
- 6:24SPEAKER_01: こういった目に見えない価値をどうやって社会全体で
- 6:28SPEAKER_01: 評価して適正な価格として医療に反映していくべき
- 6:32SPEAKER_01: なのでしょうか。
- 6:33SPEAKER_01: ぜひあなたもこの問いについて少し時間をとって
- 6:36SPEAKER_01: 考えてみてください。今回も深い分析でしたね。