Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 最適使用推進ガイドライン5品目を解説|胃癌・OSAS・MASHの新要件
Transcript
- 0:00SPEAKER_00: 明日、あなたの病気を95%治せる画期的な新薬が
- 0:06SPEAKER_00: 承認されたとちょっと想像してみてください。はい、
- 0:09SPEAKER_01: それはすごいニュースですよね。
- 0:10SPEAKER_00: ですよね。
- 0:11SPEAKER_00: でもいざ病院に行くと、
- 0:14SPEAKER_00: 残念ですがあなたには使えません
- 0:16SPEAKER_00: って合法的に門前払いされてしまう。これ、
- 0:19SPEAKER_00: 今の日本の医療現場で普通に起きていることなんですよ。
- 0:22SPEAKER_00: そうなんですよね。
- 0:24SPEAKER_01: 今回の深掘りでは、
- 0:26SPEAKER_01: 令和8年6月の注意教資料をベースにその理由を
- 0:29SPEAKER_01: 解き明かしていきます。
- 0:31SPEAKER_01: 新薬って承認されて終わりじゃないんですよ。
- 0:34SPEAKER_00: あ、違うんですか?
- 0:35SPEAKER_01: ええ。皆さんが実際にその恩恵を受けるには、
- 0:39SPEAKER_01: 最適使用推進ガイドラインという驚くほど厳格なルールの
- 0:43SPEAKER_01: 壁を越えなきゃいけないんです。
- 0:44SPEAKER_00: なるほど。
- 0:45SPEAKER_00: 今回は3つの領域から最新薬を取り上げて、
- 0:49SPEAKER_00: その誰に、
- 0:50SPEAKER_00: どこで薬を使うかっていうシステムが
- 0:52SPEAKER_00: いかに複雑化しているかを見ていきましょう。
- 0:55SPEAKER_00: まず驚いたのが、
- 0:57SPEAKER_00: 今世界中で話題になっている肥満症関連の薬、
- 1:00SPEAKER_00: ゼップバウンドとウゴービですね。
- 1:03SPEAKER_01: 睡眠時無呼吸症候群やマッシュと呼ばれる脂肪肝炎の
- 1:07SPEAKER_01: 適応についてですね。
- 1:08SPEAKER_00: そうそう
- 1:08SPEAKER_00: それです。
- 1:09SPEAKER_00: これがもう読んでて思いましたけど、
- 1:11SPEAKER_00: まるで超厳格なVIPクラブみたいなんですよ。
- 1:15VIPクラブ、
- 1:16なるほど。
- 1:16SPEAKER_00: 美容目的がお断りなのは当然として、
- 1:19SPEAKER_00: 循環器や呼吸器の専門医と肥満症の専門医が
- 1:23SPEAKER_00: 両方いないと処方すらできない。
- 1:25SPEAKER_00: さらに上筋の管理栄養士も必須っていう。
- 1:29SPEAKER_00: かなりハードル高いですよね。
- 1:31SPEAKER_00: しかも自施設で3ヶ月以上きちんとした食事と運動の
- 1:35SPEAKER_00: 指導を行って、それ
- 1:36SPEAKER_00: でも効果が出ない患者さんにだけようやくチケットが
- 1:40SPEAKER_00: 渡される仕組みなんです。
- 1:42SPEAKER_01: でも薬なん
- 1:43SPEAKER_01: だから最初から飲めば手っ取り早いじゃないですか。
- 1:45SPEAKER_01: なんでわざわざその3ヶ月のダイエット失敗を必須条件に
- 1:49SPEAKER_01: するんですか?
- 1:50SPEAKER_00: そこにはですね定期評価っていう冷徹ともいえるルールが
- 1:54SPEAKER_00: 絡んでるんですよ。
- 1:55SPEAKER_00: 実は投与開始後も数ヶ月で改善傾向が
- 1:59SPEAKER_00: なければ強制的にストップになります。
- 2:01SPEAKER_00: え、途中で取り上げられちゃうんですか?
- 2:03SPEAKER_00: そうなんです。
- 2:04SPEAKER_00: でもこれは意地悪じゃなくて、
- 2:06SPEAKER_00: 需要が爆発している薬を本当に効果が
- 2:09SPEAKER_00: あって必要な人にだけ確実に届けるための極めて合理的な
- 2:13SPEAKER_00: 資源配分システムなんですよね。
- 2:16SPEAKER_01: なるほどな。
- 2:17SPEAKER_01: 最初は行動とか病院の体制っていう門番が
- 2:20SPEAKER_01: いるわけですね。
- 2:22SPEAKER_01: でも薬の威力が上がると今度はその門番が
- 2:25SPEAKER_01: 自分の体の中に変わってくる。
- 2:28SPEAKER_01: これががん領域のテビムブラやイミフィンジの話です
- 2:31SPEAKER_01: よね。
- 2:31SPEAKER_00: おっしゃる通りです。
- 2:32SPEAKER_00: テビムブラはPD-L1というタンパク質の発現率で、
- 2:36SPEAKER_00: イミフィンジはがんの臨床病気、
- 2:38SPEAKER_00: つまりステージによって使えるかどうかが
- 2:40SPEAKER_00: ミクロなレベルで厳密に分けられるんです。
- 2:43SPEAKER_01: ちょっと待ってくださいよ。
- 2:44SPEAKER_01: もし自分が
- 2:45SPEAKER_01: 胃がんなのに胃がんの薬を使わせてもらえないなんて絶対
- 2:48SPEAKER_01: 納得いきませんよ。
- 2:49SPEAKER_00: まあお気持ちはすごくわかります。
- 2:52SPEAKER_01: ステージが2A
- 2:52SPEAKER_01: だからダメですなんて、それ
- 2:54SPEAKER_01: ただ保険システムが
- 2:55SPEAKER_01: 医療費をけちってるだけなんじゃないですか?
- 2:57SPEAKER_00: 感情的にはそう思っちゃいますよね。
- 3:00SPEAKER_00: でもハザード費などの臨床データを冷静に見ると、
- 3:03SPEAKER_00: 例えばイミフィンジは2A期や2B期の患者さんには
- 3:07SPEAKER_00: 生存期間の延長傾向が見られなかったんです。
- 3:11SPEAKER_01: ああ、効果がなかったってことですか?
- 3:13SPEAKER_00: ええ、効果が
- 3:14SPEAKER_00: ないのに重篤な副作用のリスクだけを負わせる
- 3:17SPEAKER_00: わけにはいきませんからね。
- 3:18SPEAKER_00: そうですね。
- 3:19SPEAKER_00: ちなみにテビムブラの標的になるPD-L1っていうのは、
- 3:23SPEAKER_00: がん細胞が
- 3:24SPEAKER_00: 人間の免疫を騙すための偽造免許状みたいな
- 3:27SPEAKER_00: ものなんです。
- 3:28SPEAKER_01: 偽造免許状ですか?
- 3:30SPEAKER_00: はい。だから
- 3:31SPEAKER_00: その偽造免許状を持ってないがん細胞に免許状を見破る
- 3:35SPEAKER_00: 薬を使っても全く意味がないんです。
- 3:37SPEAKER_01: なるほど、
- 3:38SPEAKER_01: そういうことか。
- 3:39SPEAKER_01: だから細胞レベルのデータに基づいた個別改良が
- 3:42SPEAKER_01: 必要になるんですね。
- 3:43SPEAKER_00: そうですね。
- 3:44SPEAKER_00: そしてこの標的の絞り込みの極地とも言えるのが
- 3:47SPEAKER_00: 血液のがんに対するブレアンジなんです。
- 3:50SPEAKER_01: 出ましたね。今回、
- 3:52SPEAKER_01: 変炎体リンパ腫への適応が追加されて、
- 3:54SPEAKER_01: 走行率が95.
- 3:56SPEAKER_01: 5%って書いてありましたよ。
- 3:58SPEAKER_01: 驚異的な数字ですよね。ほぼ治るじゃないですか。だった
- 4:03SPEAKER_01: らもうすぐに全国の病院に配って使えばいいのにって
- 4:06SPEAKER_01: 思うんですけど。
- 4:06SPEAKER_00: それが絶対にできない理由があるんです。
- 4:09SPEAKER_00: ブレヤンジはカーティ細胞療法といって、
- 4:12SPEAKER_00: 患者さん自身の免疫細胞を取り出して、
- 4:15SPEAKER_00: 遺伝子を改変して戦闘力を爆上げしてから
- 4:18SPEAKER_00: 体に戻すっていう治療法なんですよ。
- 4:20SPEAKER_01: なんかSF映画みたいですね。
- 4:22SPEAKER_00: まさに。
- 4:23SPEAKER_00: まず細胞を取り出すのにアフェレーシスっていう特定の
- 4:26SPEAKER_00: 細胞だけを越している特殊な透析器みたいな大掛かりな
- 4:29SPEAKER_00: 装置とその監視体制が必要です。
- 4:32SPEAKER_01: でもその設備さえお金出して買えば普通の病院
- 4:36SPEAKER_01: でもできそうじゃないですか
- 4:37SPEAKER_00: 本当の課題は
- 4:39SPEAKER_00: 治療の後なんです免疫力を極限まで高めるので
- 4:43SPEAKER_00: サイトカイン放出症候群っていう免疫システムの暴走に
- 4:47SPEAKER_00: よる激しい炎症反応が起きるリスクが非常に高いんですよ
- 4:52SPEAKER_01: 副作用が強烈なんですね
- 4:54SPEAKER_00: 患者さんの様態が
- 4:56SPEAKER_00: 急変する可能性があるのでICU、
- 4:59SPEAKER_00: つまり特定集中治療室の完備が絶対条件になっています。
- 5:03SPEAKER_01: わあ、
- 5:04SPEAKER_01: それは薬っていうより、
- 5:06SPEAKER_01: もはや命がけの大掛かりな医療プロジェクトですね。
- 5:09SPEAKER_00: そうなんです。
- 5:10SPEAKER_00: 魔法のようにパーソナライズされて強力になるほど、
- 5:13SPEAKER_00: それを安全に扱える場所が限定されていくんですよね。
- 5:17SPEAKER_00: 最新医療は誰に
- 5:19SPEAKER_00: でも効く魔法から、
- 5:20SPEAKER_00: 選ばれた条件と完璧な設備でのみ機能する精密機械へと
- 5:24SPEAKER_00: 変わってきているんです。
- 5:25SPEAKER_00: いやー、
- 5:26SPEAKER_01: 考えさせられますね。次に、
- 5:30SPEAKER_01: あなたが画期的な新薬のニュースを見たときは、
- 5:33SPEAKER_01: その裏には必ず施設と患者の厳格な選別という壁が
- 5:37SPEAKER_01: あることをぜひ思い出してほしいです。
- 5:40SPEAKER_00: そうですね。
- 5:41SPEAKER_00: ルールには必ず理由がありますから。はい。
- 5:44SPEAKER_01: 最後に皆さんにちょっと考えてみてほしいことが
- 5:46SPEAKER_01: あります。
- 5:48SPEAKER_01: 薬が究極に進化していく未来、
- 5:51SPEAKER_01: 私たちが直面する最大の絶望は、
- 5:54SPEAKER_01: 病気を治す薬がないことではないのかもしれません。
- 5:58SPEAKER_00: と言いますと?
- 6:00SPEAKER_01: その薬を処方できる超専門施設が
- 6:03SPEAKER_01: 自分の通える範囲に存在しないこと、
- 6:06SPEAKER_01: それが最大の壁になるんじゃないでしょうか。
- 6:10SPEAKER_01: 本日はここまでです。