Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 【中医協第654回】8月新薬13品目の薬価と算定のポイント
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- 0:00SPEAKER_00: あの画期的な新薬を開発して国から
- 0:03SPEAKER_00: 素晴らしいって絶賛されたのに実際のボーナスが
- 0:07SPEAKER_00: 0円だったこれを聞いているあなたならどう思います
- 0:11SPEAKER_01: かいやー開発者だったらちょっと膝から崩れ落ちますよね
- 0:16SPEAKER_01: でもこれフィクションじゃなくて現実なんですよ
- 0:19SPEAKER_00: そうなんですよ今回の深掘りのテーマは
- 0:22SPEAKER_00: まさにその驚くべき現実です
- 0:24SPEAKER_00: 2026年8月の中医協総会の資料から日本の医療制度が
- 0:30SPEAKER_00: イノベーションへのご褒美と医療費の節約の間で
- 0:34SPEAKER_00: どうやってギリギリの綱引きをしているのかを
- 0:37SPEAKER_00: 探っていきますはい
- 0:38SPEAKER_01: 今回もあのすごく興味深いデータが
- 0:41SPEAKER_01: 揃っていますよ
- 0:41SPEAKER_00: まず注目したいのが
- 0:43SPEAKER_00: 8月に保険適用される13品目の新薬についてですね
- 0:48SPEAKER_01: そうですね。その中
- 0:49SPEAKER_01: でも希少疾患の治療薬であるジョエンジャジョウとか
- 0:52SPEAKER_01: キネレットをですね、
- 0:54SPEAKER_01: これらは作用基準とか小児への有効性が
- 0:56SPEAKER_01: 高く評価されたんです。
- 0:58SPEAKER_00: 資料を見るとジョエンジャジョウには
- 1:00SPEAKER_00: 40%の有用性加算とか、
- 1:03SPEAKER_00: あと10%の小児加算がついていますよね。
- 1:06SPEAKER_00: あなたもこれを見て画期的な薬が
- 1:08SPEAKER_00: ちゃんと評価されているなって思ったはずです。
- 1:10SPEAKER_01: そうですよね。
- 1:12SPEAKER_01: でもここからがちょっと信じられないんですが、
- 1:15SPEAKER_01: 実際の薬の値段にはこの加算分が
- 1:17SPEAKER_01: 1円も上乗せ
- 1:19SPEAKER_00: されていないんです。え、
- 1:20SPEAKER_00: 1円もですか?
- 1:21SPEAKER_00: どうしてそんなバグみたいなことが起きるんですか?
- 1:24SPEAKER_01: これがですね、
- 1:25SPEAKER_01: 減価計算方式っていうルールの罠なんですよ。
- 1:28SPEAKER_00: 減価計算方式ですか?
- 1:31SPEAKER_00: はい。全く新しい薬すぎて比較対象がない場合、
- 1:35SPEAKER_00: 製造コストなんかを積み上げて価格を決めるんですけど、
- 1:38SPEAKER_00: 今回の計算式上、
- 1:40SPEAKER_00: プレミアムとしてかける加算係数という数字が
- 1:43SPEAKER_00: ゼロに設定されちゃったんです。
- 1:45SPEAKER_01: ちょっと待ってください。
- 1:46SPEAKER_01: つまり、
- 1:47SPEAKER_01: 素晴らしいから40%のボーナスかけ率を適用します
- 1:50SPEAKER_01: と言いながら、
- 1:52SPEAKER_01: 肝心の基本給にあたる係数をゼロにされたと。
- 1:55SPEAKER_00: そういうことになりますね。はい。
- 1:57SPEAKER_01: ゼロに何をかけてもゼロ
- 1:59SPEAKER_01: なので、
- 1:59SPEAKER_01: 結局ボーナスはゼロ円です
- 2:01SPEAKER_01: って言われているようなものですよね、
- 2:02SPEAKER_01: それって。
- 2:03SPEAKER_00: まあまさにその例えの通りですね。
- 2:06SPEAKER_00: さらに製薬会社にとって厳しいのは、
- 2:08SPEAKER_00: 国として高く評価したという形だけは残るのに、
- 2:12SPEAKER_00: 見入りが全くないことなんです。わ、
- 2:14SPEAKER_00: それはきついですね。
- 2:16SPEAKER_00: ええ。イノベーションを単純な数学的メカニズムで
- 2:19SPEAKER_00: 評価しようとするシステムの限界とも言えますね。
- 2:22SPEAKER_01: うーん、
- 2:23SPEAKER_01: そんな血も涙もない計算式で動いているのかと思いきや、
- 2:27SPEAKER_01: 一方ですごく人間味あふれる物理的な理由で、
- 2:30SPEAKER_01: 国の厳格なルールが曲げられているケースもあるんです
- 2:33SPEAKER_01: よね。ああ、
- 2:34SPEAKER_00: 月経困難症の治療薬、
- 2:36SPEAKER_00: マルシロン配合状の処方日数の件ですね。はい、
- 2:39SPEAKER_00: それです。本来、
- 2:40SPEAKER_00: 安全性を確認するためなんですが、
- 2:42SPEAKER_00: 新しい薬は発売から1年間、
- 2:45SPEAKER_00: 1回に14日分しか処方してはいけないという絶対的な
- 2:49SPEAKER_00: ルールがあるんです。
- 2:50SPEAKER_01: なのにこの薬には20日分処方してOKっていう特例が
- 2:54SPEAKER_01: 出ている患者さんの身体的サイクルが24日から
- 2:57SPEAKER_01: 80日間続くからっていう最もな理由もあるんですが
- 3:00SPEAKER_00: 一番の決め手がその薬のパッケージなんです
- 3:04SPEAKER_00: よねパ
- 3:05SPEAKER_01: ッケージですかそうですこの薬は錠剤が
- 3:09SPEAKER_01: 押し出して使うプラスチックのシートいわゆる
- 3:11SPEAKER_01: ptpシートに入っているんですけどそれが
- 3:14SPEAKER_01: 20錠で1セットになっているんですよ
- 3:16SPEAKER_00: つまり国が
- 3:17SPEAKER_00: 定めた14日分までっていうという厳格なルールが、
- 3:21SPEAKER_00: シートが二重錠入りだから
- 3:22SPEAKER_00: 途中で切るの面倒だし20日にしようっていう現場の都合で
- 3:25SPEAKER_00: 曲げられたわけですよね。はい。
- 3:28SPEAKER_01: 結局のところ、
- 3:29SPEAKER_01: 医療という厳密な世界も物流とか実務といった現実とは
- 3:33SPEAKER_01: 切り離せないというリアルな証明ですよね。
- 3:36SPEAKER_00: このギャップ面白すぎませんか?
- 3:38SPEAKER_01: ええ。無理にハサミでシートを切れば間違いが
- 3:41SPEAKER_01: 起きるリスクもありますからね、実際。
- 3:43SPEAKER_00: そうやって新薬のパッケージみたいな物理的な理由には
- 3:46SPEAKER_00: 柔軟に対応するのに、
- 3:48SPEAKER_00: その薬が市場に定着して大成功を収めた途端、
- 3:52SPEAKER_00: 国は突然厳しい顔になるんですよね。
- 3:54SPEAKER_01: それが資料の後半にあるデュピクセントの話ですね。
- 3:57SPEAKER_01: はい。
- 3:58SPEAKER_01: デュピクセントは
- 3:59SPEAKER_01: すでにアトピー性皮膚炎なんかで大活躍している薬です
- 4:02SPEAKER_01: が、
- 4:03SPEAKER_01: 新たに慢性閉塞性肺疾患への効果も認められて、
- 4:07SPEAKER_01: ついに年間販売額が1500億円を超えました。
- 4:11SPEAKER_00: 1500億円。
- 4:12SPEAKER_00: たくさんの患者さんを救っている超優秀な
- 4:15SPEAKER_00: 大ヒット役じゃないですか。
- 4:17SPEAKER_01: そうなんです。
- 4:18SPEAKER_01: それなのに11月から約3.
- 4:21SPEAKER_01: 7%の値下げ対象になってしまうと書かれているんです。
- 4:24SPEAKER_00: えー、
- 4:24SPEAKER_00: どうしてですか?
- 4:25SPEAKER_01: 活躍しているのに。ここで持続可能性特例価格調整という強力な
- 4:30SPEAKER_01: ブレーキ機構が発動するからです。持続
- 4:33SPEAKER_00: 可能性ですか?
- 4:34SPEAKER_01: はい。売上が1500億円といった巨額のラインを超えた瞬間、
- 4:38SPEAKER_01: 医療保険の財政パンクを防ぐために、
- 4:40SPEAKER_01: 強制的に薬の値段を削り落とすという仕組みなんですよ。
- 4:44SPEAKER_00: ブレーキが必要なのはわかるんですが、
- 4:47SPEAKER_00: でもこれ製薬会社からすれば、
- 4:49SPEAKER_00: 頑張って薬を普及させて新しい発見もしたのに、
- 4:53SPEAKER_00: 売れすぎたから
- 4:53SPEAKER_00: ペナルティとして値下げねって言われているような
- 4:56SPEAKER_00: ものですよね。
- 4:57SPEAKER_01: 厳しい見方をすればそうなってしまいますね。
- 4:59SPEAKER_00: これじゃ企業のモチベーションを削いでしまいませんか?
- 5:02SPEAKER_01: まさにそこが国が直面している最大のジレンマなんですよ
- 5:06SPEAKER_01: 少数のブロックバスター薬と呼ばれる超特大ヒット薬が
- 5:10SPEAKER_01: 国の予算を一気に食いつぶしてしまうのを防ぐためには
- 5:13SPEAKER_01: どうしても必要なルールなんです
- 5:16SPEAKER_00: なるほどイノベーションを評価したいという理想と
- 5:19SPEAKER_00: 限られたお財布事情という現実今日あなたが
- 5:23SPEAKER_00: 持ち込んでくれた資料の裏にはこのギリギリの綱引きが
- 5:26SPEAKER_00: 隠されていたんですねそうですね。
- 5:28SPEAKER_01: 薬の値段というのは単なる数字ではなくて、
- 5:31SPEAKER_01: 日本の医療制度のサバイバル戦略そのものなんです。
- 5:35SPEAKER_00: では最後に資料を読み解いた上で、
- 5:38SPEAKER_00: これを聞いているあなたに一つ問いかけたいと思います。
- 5:42SPEAKER_00: もし成功して適応症が増えて売れるほど利益率が
- 5:46SPEAKER_00: 下がるのが運命だとしたら、
- 5:49SPEAKER_00: 製薬会社は
- 5:50SPEAKER_00: 将来既存薬の新しい効果を探すこと自体を
- 5:53SPEAKER_00: やめてしまうのではないでしょうか。
- 5:55SPEAKER_01: うーん、
- 5:56SPEAKER_01: それは考えさせられる視点ですね。
- 5:59SPEAKER_00: 次回、
- 6:00SPEAKER_00: 病院でお薬を受け取るとき、
- 6:02SPEAKER_00: この医療の未来について少しだけ想像してみてください。