Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 【中医協第652回】7月新薬2成分の薬価と算定根拠を解説
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- 0:00SPEAKER_00: あのちょっと想像してみてほしいんですけど、
- 0:02SPEAKER_00: あなたが画期的な新薬を開発して、国が
- 0:06SPEAKER_00: 定めるイノベーションのボーナス条件を全て
- 0:09SPEAKER_00: クリアしたとしますよね。はい、
- 0:10SPEAKER_01: それはもう素晴らしいことですよね。
- 0:12SPEAKER_00: なんですけど、
- 0:13SPEAKER_00: ところが国は
- 0:14SPEAKER_00: その素晴らしいボーナスにいきなりゼロを掛け合わせて
- 0:18SPEAKER_00: 無に期してしまうとしたら。
- 0:20SPEAKER_01: ちょっと信じられないというか、
- 0:22SPEAKER_01: ひどい展開ですよね。
- 0:23SPEAKER_00: そうなんですよ。
- 0:24SPEAKER_00: 今日はそんな容赦ない見えないルールの話から
- 0:28SPEAKER_00: 始めたいと思います。
- 0:29SPEAKER_00: 今回深掘りするのは、
- 0:30SPEAKER_00: 日本の医療費の行方を決める究極の戦場というか、
- 0:35SPEAKER_00: 令和8年7月の中医教資料です。
- 0:37SPEAKER_01: なるほど、
- 0:38SPEAKER_01: 薬価算定の資料ですね。
- 0:40SPEAKER_00: ここで同時期に承認されたジャスケードと
- 0:43SPEAKER_00: ハイツエキシンという2つの新薬を例にして、
- 0:46SPEAKER_00: 病院で処方される薬の値段が1円単位でどう決まるのか、
- 0:50SPEAKER_00: その裏側を紐解いていきます。はい。
- 0:53SPEAKER_01: 普段病院の窓口で何気なく支払っている薬代なんです
- 0:56SPEAKER_01: けど、
- 0:57SPEAKER_01: その価格設定って単なる材料費の足し算ではないんです
- 1:01SPEAKER_01: よ。
- 1:01SPEAKER_01: 資料を読み解くと非常に緻密で、
- 1:04SPEAKER_01: 時として驚くほどシビアな力学が働いていることが
- 1:07SPEAKER_01: わかりますね。
- 1:08SPEAKER_00: まず薬の基本価格をどう決めるかっていう
- 1:11SPEAKER_00: スタート地点なんですけど、
- 1:12SPEAKER_00: この2つの薬、
- 1:13SPEAKER_00: 同じタイミングで世に出たのに価格の決め方が
- 1:17SPEAKER_00: 全く違うアプローチだったとか。
- 1:19SPEAKER_01: そうなんです。
- 1:20SPEAKER_01: まず肺腺移症の薬であるジャスケードなんですけど、
- 1:23SPEAKER_01: これにはすでにオフェブという似たような既存薬が
- 1:26SPEAKER_01: 存在していました。
- 1:27SPEAKER_00: あーなるほど、
- 1:28SPEAKER_00: 似た薬があったんですね。はい。
- 1:30SPEAKER_00: なので、
- 1:31SPEAKER_00: その既存薬の1日あたり
- 1:33SPEAKER_00: の価格を基準にする類似薬効比較方式というものが
- 1:37SPEAKER_00: 取られたんです。
- 1:38SPEAKER_01: ご近所の相場を参考にする家探しみたいなものですね。
- 1:42SPEAKER_00: まさにそんな感じです。
- 1:43SPEAKER_00: 一方で卵巣がんの薬であるハイツエキシンの方には
- 1:47SPEAKER_00: 比較できる既存薬がゼロだったんですよ。
- 1:51SPEAKER_01: ゼロ?相場がないってことですか?
- 1:53SPEAKER_00: そうです。
- 1:54SPEAKER_00: そこで製造原価とか営業利益、
- 1:57SPEAKER_00: 流通経費、
- 1:58SPEAKER_00: そして消費税なんかを一つ一つ積み上げて計算する
- 2:03SPEAKER_00: 原価計算方式というものが採用されたんです。
- 2:07SPEAKER_01: なるほど。
- 2:07SPEAKER_01: じゃあ、
- 2:08SPEAKER_01: ハイツエキシンは材料費や人件費から
- 2:10SPEAKER_01: ガチで計算する注文住宅みたいな感覚ですね。ええ。
- 2:14SPEAKER_00: ここで非常に興味深いのは、
- 2:16SPEAKER_00: 比較対象があるかないかで最初のレールが
- 2:19SPEAKER_00: 完全に分かれるという点なんですよ。
- 2:22SPEAKER_01: 確かに。で、
- 2:23SPEAKER_01: その基本価格が決まった後ですよね。加算、
- 2:26SPEAKER_01: つまりプレミアムが上乗せされるフェーズに入ると。
- 2:29SPEAKER_00: はい。
- 2:29SPEAKER_00: ジャスケードは新規の作用基準などが評価されて、
- 2:33SPEAKER_00: 合計でなんと40%もの上乗せを獲得したんです。
- 2:37SPEAKER_01: 40%ってすごいですね。ええ。
- 2:40SPEAKER_00: 結果として18mg錠で8363円ちょうどという価格に
- 2:45SPEAKER_00: 着地しています。
- 2:46SPEAKER_01: へえ。
- 2:48SPEAKER_01: じゃああの注文住宅方式で作られた配置液晶の方は
- 2:51SPEAKER_01: どうなったんですか。
- 2:52SPEAKER_01: 資料を見ると、
- 2:54SPEAKER_01: なんか日本初の迅速導入加算とか、
- 2:56SPEAKER_01: 3つも厳しい条件をクリアしているみたいなんですけど。
- 2:59SPEAKER_00: あー、
- 3:00SPEAKER_00: ここがですね、
- 3:01SPEAKER_00: 最大の謎でありシビアな現実なんですよ。
- 3:04SPEAKER_01: え、何ですか?
- 3:05SPEAKER_00: ハイツエキシンは確かに3つの加算要件を満たしました。
- 3:09SPEAKER_00: でも結果的に価格は一切上がらなくて、7,
- 3:13SPEAKER_00: 313円40銭のまま据え置かれたんです。え、
- 3:16SPEAKER_01: 待ってください。
- 3:18SPEAKER_01: 条件を満たしたのに加算がゼロなんですか?
- 3:20SPEAKER_01: どういうことですかそれ?
- 3:22SPEAKER_00: 実はですね、
- 3:23SPEAKER_00: 減価計算方式には加算係数という仕組みがあるんです。
- 3:27SPEAKER_00: 今回この係数がゼロと判定されてしまったんですよ。
- 3:31SPEAKER_01: ゼロですか?
- 3:32SPEAKER_00: はい。数学と同じで、
- 3:34SPEAKER_00: いくら立派な加算率を獲得しても、
- 3:36SPEAKER_00: 最後にゼロをかければ全てゼロになってしまいますよね。
- 3:39SPEAKER_01: いやいや、
- 3:40SPEAKER_01: ちょっと待ってください。
- 3:41SPEAKER_01: なぜ国はそんなペナルティを与えるんですか?
- 3:44SPEAKER_01: せっかくのイノベーションじゃないですか?
- 3:46SPEAKER_00: これですね、
- 3:46SPEAKER_00: 製薬企業が
- 3:47SPEAKER_00: どれだけ減価を透明に開示しているかに
- 3:50SPEAKER_00: 連動しているんです。
- 3:52SPEAKER_01: ああなるほど原価の開示度ですかええ
- 3:54SPEAKER_00: 国としては
- 3:56SPEAKER_00: 製造コストをブラックボックスにしたまま
- 3:58SPEAKER_00: プレミアムだけ要求するのは
- 4:00SPEAKER_00: 許さないぞというスタンスなんですよね
- 4:02SPEAKER_01: つまりコストは企業秘密です
- 4:04SPEAKER_01: って隠すならじゃあイノベーションのボーナスも
- 4:07SPEAKER_01: ゼロねって突き返すわけだめちゃくちゃハードな
- 4:09SPEAKER_01: 交渉じゃないですか国も最初からバチバチですね
- 4:13SPEAKER_00: そうなんですよ本当にシビアなからくりですよね
- 4:16SPEAKER_01: じゃあ無事に価格が決まって市場に出た後は
- 4:19SPEAKER_01: どうなんですか少しは制約が
- 4:20SPEAKER_01: 緩むんでしょうか
- 4:21SPEAKER_00: いやー残念ながら手綱は緩まないんです
- 4:23SPEAKER_00: 両方とも希少疾病用医薬品として薬価が
- 4:27SPEAKER_00: 維持される制度には入るんですけどジャスケードだけが
- 4:31SPEAKER_00: 将来価格を強制的に見直される費用対効果評価の対象に
- 4:36SPEAKER_00: 指定されています
- 4:37SPEAKER_01: ジャスケードって肺繊維症の薬です
- 4:40SPEAKER_01: よねた
- 4:40SPEAKER_00: くさん売れて多くの患者さんを救ったら後から
- 4:43SPEAKER_00: 安くしろって言われるってことですか
- 4:46SPEAKER_01: まあそうですね
- 4:47SPEAKER_01: そうですね。
- 4:48SPEAKER_00: それってなんか成功に対するペナルティーみたいに
- 4:50SPEAKER_00: 聞こえますけど。
- 4:51SPEAKER_01: 企業の視点からはそう見えるかもしれないですね。ただ、
- 4:55SPEAKER_01: 国全体の視点で見ると、
- 4:57SPEAKER_01: ここを分けたのは市場規模なんですよ。
- 4:59SPEAKER_00: 市場規模、どれくらい違うんですか?
- 5:02SPEAKER_01: 配通液晶は
- 5:03SPEAKER_01: ピーク時で14億円規模の市場と予測されています。でも、
- 5:07SPEAKER_01: ジャスケイドは1.8万人、
- 5:10SPEAKER_01: 実に578億円を見込んでいるんです。
- 5:13SPEAKER_00: 578億円。
- 5:15SPEAKER_00: それは確かに国の医療保険財政へのインパクトが
- 5:18SPEAKER_00: 桁違いですね。
- 5:20SPEAKER_01: その通りです。
- 5:21SPEAKER_01: だからこそ、
- 5:22SPEAKER_01: それだけ許可の保険料を継ぎ込むからには、
- 5:24SPEAKER_01: 本当にその価格に見合うだけの効果が
- 5:27SPEAKER_01: 現実に出ているのかを、
- 5:28SPEAKER_01: 後から厳しく検証する必要があるという論理なんです。
- 5:32SPEAKER_00: なるほどな。
- 5:33SPEAKER_00: 薬の値段って
- 5:35SPEAKER_00: ただの科学的な価値の足し算じゃないんですね。
- 5:38SPEAKER_00: 比較できる薬があるかどうかから始まって、
- 5:41SPEAKER_00: コスト開示の透明性をめぐる国との駆け引きがあって、
- 5:45SPEAKER_00: 最終的な市場規模のデカさまで絡んでくるっていう、
- 5:48SPEAKER_00: なんか本当に複雑なパズルみたいですね。はい。
- 5:52SPEAKER_01: しかもそのルールが、
- 5:53SPEAKER_01: 薬本来の医療的な効果とは
- 5:55SPEAKER_01: 別の次元で作用しているという事実が、
- 5:58SPEAKER_01: この制度の最も深く、
- 5:59SPEAKER_01: 気込み深いところだと思います。
- 6:01SPEAKER_00: まさにそこなんですよ。
- 6:03SPEAKER_00: ここであなたに少し考えてみてほしいんです。はい。
- 6:06SPEAKER_00: はい。実は
- 6:07SPEAKER_00: ジャスケイドって気象疾病用なのに優先審査の対象では
- 6:11SPEAKER_00: なかったという、
- 6:12SPEAKER_00: ただそれだけの理由で市場性の加算が
- 6:15SPEAKER_00: 加減の5%に抑えられているんですよ。
- 6:17SPEAKER_00: そうなんですよね。
- 6:20SPEAKER_00: 薬の効き目や患者さんをどれだけ救うかではなくて、
- 6:24SPEAKER_00: こうした事務的な手続きの差が
- 6:26SPEAKER_00: 新しい薬を生み出すインセンティブを左右してしまう今の
- 6:31SPEAKER_00: 仕組み。あなたはどう考えますか?
- 6:34SPEAKER_00: 次にニュースを見るときのヒントにしてみてください。