Latest / 岡大徳のポッドキャスト / 【中医協第650回】新薬4成分の薬価とマンジャロ25%引き下げを解説
Transcript
- 0:00SPEAKER_01: 想像してみてください。
- 0:01SPEAKER_01: あなたが画期的な難病の新薬を開発して、
- 0:05SPEAKER_01: その有用性が国から認められたとします。
- 0:07SPEAKER_00: それは素晴らしいことですよね。
- 0:09SPEAKER_01: なのに、
- 0:10SPEAKER_01: 国が提示したイノベーションへの評価、
- 0:12SPEAKER_01: つまり価格への上乗せ係数がゼロだったとしたら。
- 0:17SPEAKER_00: それはかなりショックですね。
- 0:18SPEAKER_01: ですよね。
- 0:19SPEAKER_01: これを聞いているあなたと一緒に深掘りしていく本日の
- 0:22SPEAKER_01: テーマは、
- 0:23SPEAKER_01: ズバリ薬の価格決定の裏側です。
- 0:26SPEAKER_00: はい。今回は
- 0:28SPEAKER_00: 2026年5月13日の中医協中央社会保険医療協議会の
- 0:33SPEAKER_00: 総会データを徹底解説していきます。
- 0:36SPEAKER_01: 中医協のデータって聞くと、
- 0:38SPEAKER_01: なんかお堅い話題かなって思うじゃないですか。
- 0:41SPEAKER_01: そう思われがちですよね。
- 0:42SPEAKER_01: でも実はイノベーションの評価と医療制度の維持が
- 0:45SPEAKER_01: ぶつかり合うめちゃくちゃ面白い綱引きなんですよ。
- 0:48SPEAKER_00: まさにその通りです。
- 0:49SPEAKER_00: 単なる数字の羅列じゃなくて、
- 0:51SPEAKER_00: 日本の医療制度が
- 0:53SPEAKER_00: 直面している命の値段と社会の限界のリアルな摩擦が
- 0:57SPEAKER_00: 見えてきますからね。
- 0:58SPEAKER_01: はい。で、まずは
- 0:59SPEAKER_01: 5月20日に主催されるソホノスとかの新薬についてです。
- 1:03SPEAKER_01: これ、
- 1:04SPEAKER_01: 既存の類似薬が全くないんですよね。ええ、
- 1:06SPEAKER_00: そういった場合は減価計算方式というルールで価格が
- 1:10SPEAKER_00: 決まります。
- 1:11SPEAKER_01: あの製造原価に営業利益の15.
- 1:14SPEAKER_01: 6%とか流通経費の6.
- 1:16SPEAKER_01: 9%を上乗せするっていうあれですねそうです
- 1:19SPEAKER_00: 極めて標準的なやり方ですね
- 1:21SPEAKER_01: そこまでは理解できるんです
- 1:22SPEAKER_01: でも資料を見て驚いたのが
- 1:24SPEAKER_01: 気象疾患向けで有用性とか市場性の加算が
- 1:28SPEAKER_01: 認められたのに
- 1:29SPEAKER_00: 掛け合わせる加算係数がゼロだった
- 1:32SPEAKER_00: という部分ですね
- 1:33SPEAKER_01: そうなんですよ
- 1:34SPEAKER_01: 加算係数ゼロってどういうことですか
- 1:37SPEAKER_01: つまり、
- 1:38SPEAKER_00: 実質1円も価格に上乗せされないというシビアな
- 1:42SPEAKER_00: 現実です。えー、
- 1:44SPEAKER_01: 1円もですか。
- 1:45SPEAKER_01: せっかく画期的な薬なのに。はい。
- 1:48SPEAKER_00: 画期的な薬であっても、
- 1:49SPEAKER_00: まだ長期的な臨床データが不足している段階ですよね。
- 1:53SPEAKER_01: あー、
- 1:53SPEAKER_01: なるほど。
- 1:54SPEAKER_00: そうなると、
- 1:55SPEAKER_00: 国の厳しい予算の枠組みの中では、
- 1:58SPEAKER_00: 最大限の評価を与えきれないというブレーキが
- 2:01SPEAKER_00: 働くんです。
- 2:02SPEAKER_01: なるほどなぁ。
- 2:04SPEAKER_01: イノベーションを評価するっていう建前の裏に、
- 2:06SPEAKER_01: 膨張する医療費を何とか抑え込みたい国の強い意志を
- 2:10SPEAKER_01: 感じますね。
- 2:11SPEAKER_00: そうですね。
- 2:12SPEAKER_00: そして価格決定の壁を越えて現場に出ても、
- 2:15SPEAKER_00: 今度は処方ルールの壁にぶつかります。
- 2:17SPEAKER_01: 処方ルールというと、通常は
- 2:20SPEAKER_01: 新薬って安全確認のために1回14日分しか
- 2:24SPEAKER_01: 出せないっていうルールですよね。はい。
- 2:26SPEAKER_00: でも今回、
- 2:27SPEAKER_00: 調査脂肪酸代謝異常症の薬であるドジョルビには
- 2:30SPEAKER_00: その例外が認められました。
- 2:32SPEAKER_01: 安全のためのルールなら絶対なんじゃないんですか。
- 2:35SPEAKER_01: 資料によると薬をスイカみたいに丸ごと
- 2:38SPEAKER_01: 買わなきゃいけなくて、
- 2:39SPEAKER_01: 切り売りできないってことでしたけど。
- 2:41SPEAKER_00: まさにそのスイカの例えがぴったりです。
- 2:43SPEAKER_00: 特定の成分が
- 2:44SPEAKER_00: 普通のプラスチック容器に溶けてしまう相性の問題が
- 2:48SPEAKER_00: あるんです。
- 2:48SPEAKER_01: え、じゃあ専用の容器じゃないとダメなんですか?
- 2:51SPEAKER_00: ええ、専用の500mlのガラス瓶でしか交付できない
- 2:54SPEAKER_00: 決まりになっています。
- 2:56SPEAKER_01: 500mlって結構な量ですよね。
- 2:58SPEAKER_00: そうなんです。
- 2:59SPEAKER_00: だから小児の患者さんに一瓶渡すだけで、
- 3:02SPEAKER_00: どうしても自動的に14日分を超過してしまうんですよ。
- 3:06SPEAKER_01: ああ、
- 3:07SPEAKER_01: 物理的なパッケージのせいで、
- 3:09SPEAKER_01: そもそも14日分というルールが守れないわけだ。ええ。
- 3:13SPEAKER_00: その上、
- 3:13SPEAKER_00: この疾患は通院のストレス自体が発作を誘発するリスクが
- 3:17SPEAKER_00: あるんです。
- 3:19SPEAKER_01: それは本末転倒ですね。
- 3:21SPEAKER_01: ルールを守らせるためのこまめな通院が、
- 3:24SPEAKER_01: 逆に患者さんを危険にさらしてしまうなんて。
- 3:26SPEAKER_00: だからこそ、
- 3:27SPEAKER_00: 国も実態のメカニズムに合わせた合理的な例外を
- 3:31SPEAKER_00: 認めたということです。
- 3:32SPEAKER_01: こういう実態に寄り添う柔軟性がある一方で、
- 3:35SPEAKER_01: 今度は売れすぎた大ヒット役に対してはルールが
- 3:39SPEAKER_01: 一転して牙を吐きますよね。
- 3:41SPEAKER_00: 8月1日からの価格改定の話ですね。はい。
- 3:45SPEAKER_01: アムブトラが約14.6%、
- 3:47SPEAKER_01: そしてマンジャロンに至っては
- 3:49SPEAKER_01: 一律25%の大幅値下げです。
- 3:52SPEAKER_00: かなり思い切った数字です。
- 3:54SPEAKER_01: いや25%カットって凄まじいですよ
- 3:58SPEAKER_01: 莫大なリスクを負って良い薬を作ってそれが
- 4:01SPEAKER_01: 売れたのに
- 4:01SPEAKER_00: 成功のペナルティーを受けるみたいに見えます
- 4:04SPEAKER_01: よねそうなんですこれじゃあ製薬会社が
- 4:08SPEAKER_01: 日本に画期的な新薬を持ってくる意欲が
- 4:10SPEAKER_01: 死んでしまわないですか
- 4:12SPEAKER_00: 実際製薬業界から
- 4:13SPEAKER_00: も同じような強い懸念の声は出ています
- 4:16SPEAKER_00: ただこれは罰としてやっているわけではないんです
- 4:19SPEAKER_01: バツじゃないとすると何なんですか?
- 4:22SPEAKER_00: 持続可能性特例価格調整という仕組みで、
- 4:25SPEAKER_00: システムを延命させるための緊急ブレーキなんですよ。
- 4:29SPEAKER_01: 緊急ブレーキ?
- 4:30SPEAKER_00: はい。マンジャロは販売額が1000億から
- 4:33SPEAKER_00: 1500億円規模に急拡大しました。
- 4:36SPEAKER_01: 1500億ですか。
- 4:37SPEAKER_01: 桁違いですね。
- 4:39SPEAKER_00: 現在の日本の買い保険制度は、
- 4:41SPEAKER_00: 一つの薬にこれほどの巨大な予算が
- 4:44SPEAKER_00: 集中することを想定して設計されていないんです。
- 4:47SPEAKER_01: なるほど。
- 4:48SPEAKER_01: つまり、
- 4:49SPEAKER_01: 薬の良し悪しじゃなくて、
- 4:51SPEAKER_01: 保険制度が
- 4:52SPEAKER_01: パンクするかどうかという物理的な限界点でルールが
- 4:55SPEAKER_01: 発動しているんですね。
- 4:57SPEAKER_00: 私たちが普段、
- 4:58SPEAKER_00: この薬はどれだけ革新的かに注目しがちですが、
- 5:01SPEAKER_00: 今の国や中医協の最大の関心事は、
- 5:04SPEAKER_00: そのイノベーションを今の社会は
- 5:06SPEAKER_00: どこまで買い支えられるのかという点に
- 5:09SPEAKER_00: 移っているんです。
- 5:10SPEAKER_01: そう考えると、
- 5:11SPEAKER_01: 今回の中医協のルールって決して遠い世界の
- 5:14SPEAKER_01: 話じゃないですね。
- 5:15SPEAKER_00: まさにその通りです。
- 5:17SPEAKER_00: あなたや私が
- 5:18SPEAKER_00: 支払う毎月の保険料や将来受けられる医療の選択肢に
- 5:22SPEAKER_00: 直結しています。
- 5:24SPEAKER_01: 革新的な新薬が次々と生まれて恩恵を受けられるのは
- 5:27SPEAKER_01: 本当に素晴らしいことです。
- 5:29SPEAKER_01: 本当に。でも、医療費が膨張し続ける中で、
- 5:33SPEAKER_01: 命を救うイノベーションの対価と社会全体の支払い能力の
- 5:37SPEAKER_01: 限界点は一体どこにあるんでしょうか。
- 5:39SPEAKER_00: 難しい問題ですね。
- 5:41SPEAKER_01: もし今後、
- 5:42SPEAKER_01: AIなんかが創薬をさらに加速させて、
- 5:45SPEAKER_01: 超高額だけど確実に命を救う薬が
- 5:48SPEAKER_01: 毎月のように誕生したら、
- 5:50SPEAKER_01: 私たちは
- 5:51SPEAKER_01: 全員の命を平等に救うことを諦めなきゃいけない日が
- 5:54SPEAKER_01: 来るんでしょうか。
- 5:55SPEAKER_00: それはこれから
- 5:56SPEAKER_00: 社会全体で必ず直面する究極の選択になりますね。ええ。
- 6:00SPEAKER_01: この問いについて、
- 6:02SPEAKER_01: ぜひこれを聞いているあなた自身も考えてみてください。
- 6:05SPEAKER_01: それでは今回の深掘りはここまでです。