Latest / 英国ドラマタイム / #89 映画「ジェイン・オースティン秘められた恋」 もしジェインのあの恋が、彼女の物語の原動力だったとしたら・・・
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- 0:10英国ドラマタイムへようこそ。この番組は、イギリスの歴史ドラマが大好きな私が、ドラマや映画のおすすめ、ロケ地の秘密、当時の暮らしまで深掘りしてご紹介しています。物語の背景を知ると、作品がもっと楽しくなります。
- 0:27今日取り上げる映画は、2007年の映画、ジェイン・オースティン秘められた恋。オリジナルタイトルは、Becoming Jane。主演のアン・ハサウェイが、ジェイン・オースティンが小説を書き始めるまでの若き日を描いた作品です。
- 0:45この映画を見ると、ジェイン・オースティンがなぜあのような物語を書かずにはいられなかったのかがわかる気がするんです。まずはあらすじからご紹介しますね。
- 0:59舞台は18世紀末のイングランド。牧師の娘、ジェイン・オースティンは、豊かとは言えない家庭の中で、結婚か自立かという現実に直面していました。
- 1:11ある日、彼女の前に現れたのは、アイルランド出身の青年弁護士、トム・ルフロイ。憂いで皮肉屋な第一印象とは裏腹に、ジェインと知性で渡り合える唯一の相手でした。
- 1:25二人は反発しあいながらも、言葉を交わすたびに距離は縮まり、やがて強く惹かれあっていきます。しかし、愛だけでは生きていけない時代、トムには将来を左右する家族の期待があり、ジェインにもまた生活を支えるための結婚という現実が迫っていました。
- 1:45別の縁談、家族の思惑、そして経済という見えない壁に阻まれて、二人の関係は次第に大きな選択を迫られていきます。愛を貫くのか、それとも現実に従うのか、二人の若き日の決断は、やがて彼女の人生を形作って、後に生まれる数々の物語へとつながっていきます。
- 2:09この映画、私はとても好きです。冒頭でも言いましたが、見ていると、ジェイン・オースティンの小説がどこから来たのかというのが、じわじわと見えてくるんですね。
- 2:22こんな場所に住んでいて、こんな景色の中で育って、こんなことに喜びを感じて、こんなことに苦しんでいた、その断片が流れ込んでいます。
- 2:32だから、人間観察が深くて、結婚というテーマがあんなに切実で、だからこそ物語の中でハッピーエンドへ向かっていく、そういうことなんだなってなるんですね。
- 2:47でも、この映画にはかなり着色部分があるので、好き嫌いが大きく分かれる映画だと思います。
- 2:55この映画には、元になった本があります。英文学教授ジョン・スペンスが書いた、Becoming JaneAusten、2003年出版の本です。
- 3:07彼は、オースティンの手紙や資料を丹念に調べて、実装に迫った電気的な作品です。
- 3:14でも、普通の電気本とは少し違っていて、調べた記録をもとに、ジェーンの恋愛経験が作品にどう影響したのかというのを本の中で考察しているんですね。
- 3:26特に、トム・ルフロイという青年とのジェーンの儚い恋に焦点を当てていて、わずかに分かっている事実からこうだったのではないかという大胆な可能性を考えて書き進められた本です。
- 3:41そして、映画はこの本にさらに着色を入れていて、特にトムとの恋愛部分はかなりロマンチックに膨らんでいます。
- 3:53では、ここからはもうちょっと分かるように、映画と事実が違うところを取り出してみたいと思います。
- 4:01まず、ジェーンがトムについて自分の言葉で語ったものは、実はお姉さんカサンドラへの手紙2通分しか残っていないんです。
- 4:12映画ではあれだけ濃密な時間が描かれているのに、一時資料はそれだけなんですね。
- 4:18しかもカサンドラはジェーンの死後、個人的すぎる手紙を大量に処分してしまっているので、本当はもっと気持ちが綴られた手紙があったはずなんですね。
- 4:29だから分かっていないことがとても多い。
- 4:32そして2人が実際に過ごした時間もたったの4週間で、クリスマスチーズンの武道会で何度も顔を合わせて、本の貸し借りをして、でもその4週間だけの話なんです。
- 4:47じゃあトムっていうのはどんな人だったのかというと、アイルランド出身で住人兄弟の長男、家族みんなの期待を背負っていた。
- 4:57その期待に応えて大学をトップで卒業して、後にアイルランドの最高裁判所長官にまで登り詰めた人なんです。
- 5:07映画の中で一番ドラマチックな場面、2人の駆け落ちは、あれは映画の中の脚色です。
- 5:13実際にはトムはそのままロンドンに帰ってしまって、翌年には別の女性と婚約しています。
- 5:21映画の中のトムは若くて無鉄砲な印象があったんですが、実際はとても責任感の強い人だったのかなと思いますね。
- 5:30だからこそジェーンとの恋を選ばなかった。
- 5:34でもトムが94歳の時にジェーンの気持ちを問われて、ボーイッシュラブ、少年のような恋だったと認めているんですね。
- 5:44ジェーンのことをちゃんと覚えていたんですね。
- 5:47当時の2人が本当はどこまで気持ちが高まっていたのか、わずか4週間、手紙2通、そのわずかな事実の隙間を映画はロマンチックに膨らませた。
- 5:59これがこの映画の脚色の正体です。
- 6:04ではここからは私がこの映画をお勧めする見どころを6つご紹介したいと思います。
- 6:11まず初めにジェーンがあの小説を書いた理由がわかる。
- 6:16この映画は脚色がものすごく入っています。
- 6:20でも彼女を取り巻く状況や生活はあの通りだと思うんですね。
- 6:26当時の女性にとって結婚は今とは全然違う意味があって、生きていくための手段だったんです。
- 6:33愛する人と結婚したい、でもそれを選ぶのは本当に難しい。
- 6:38経済的な現実と気持ちとの間でどうにもならない状況に追い込まれていきます。
- 6:45そんな状況の中で彼女が書いたのが、田舎の町で暮らす女性たちが、
- 6:50冬を直接を経てハッピーエンドの結婚をするというお話です。
- 6:56傲慢と偏見の中で、ベネット家のお母さんって娘の結婚にも必死になるコメディっぽいキャラとして描かれているじゃないですか。
- 7:05でもこの映画のお母さんは本気なんです。
- 7:09裕福な男性のプロポーズを断ったジェーンにお母さんはこう言います。
- 7:14物売りに嘘をつき、小銭をかき集める暮らし。再現のないお金の苦労。
- 7:19でもあなたのお金はないのよ。結婚しなきゃ無一無よ。
- 7:25自分は愛の結婚で苦労しているから、厳しくて胸に刺さる言葉なんですね。
- 7:32オースティンは、あのコミカルな描き方の裏にこういう現実を知っていたんだなと思います。
- 7:40二つ目は、映画の中のジェーンがエリザベス・ベネットと重なる。
- 7:46ジェーンは感受性が豊かで、人の観察がすごくできて、自分の意見をきちっと言える人なんですね。
- 7:54どう行きたいかを自分でちゃんとわかっていて、だからこそ流されたくないしブレたくない。
- 8:00これって完全にエリザベス・ベネットですよね。
- 8:05しかも映画の中でジェーンはプロポーズを一度断るシーンがあります。
- 8:10好きでもない相手とは結婚できない。
- 8:12これもそのままエリザベスですよね。
- 8:16三つ目は、傲慢と偏見が生まれる瞬間が映画の中にあるです。
- 8:22映画の中でジェーンが描き始める作品が、なんと傲慢と偏見の典型なんです。
- 8:29そしてジェーンと友の二人の出会いが最悪で、そこから恋に発展していくんですけれども、これもね、傲慢と偏見ですよね。
- 8:39映画の中でジェーンが頭に浮かび、書いていく文章が綴られていく場面が出てきます。
- 8:47ウィッカム氏は全女性への視線を集める。
- 8:52ペンバリーの森のこの気持ちは変わらない。
- 8:56ダーシー氏が結婚してもこういった言葉が出てくるんですけど、これは傲慢と偏見好きにはたまらないですね。
- 9:054つ目は森が美しい。
- 9:09この映画の中に森のシーンが何度も出てくるんですけれども、それがただ美しいだけではなくて、ジェーンと友の二人の関係が動く場所がいつも森なんですよね。
- 9:22当時の女性にとって、街や家の中は社会のルールが支配している場所です。
- 9:27いつも誰かに見られている。
- 9:29でも森は薄暗くて人目がない。社会から切り離された場所で本音で話せる場所。
- 9:37ジェーンと友の最初の出会いも森でした。
- 9:40都会から来てちょっと花持ちにならない友が田舎の森を苦労して歩いているところで、ジェーンと再会してまたちょっと嫌な感じの会話になっていく。
- 9:51そして二度目の森のシーンでは一度離れ離れになったんですが、友がやっぱり忘れられなくてジェーンに会いに来て駆け落ちを提案する場面だったんですね。
- 10:03高い木に囲まれた森の静けさと美しさの中で動いていく二人の関係。
- 10:09なんであのシーンを森にしたんだろうなって考えていたんですけれども、そういうことなんじゃないのかなと思いました。
- 10:17五つ目は女性作家への厳しい視線。
- 10:21物語の中でジェーンが成功している女性作家に会いに行く場面があるんですね。
- 10:26彼女は結婚もしていて作家としても活躍している。
- 10:30ジェーンにとっては目指すべき存在として会いに行くわけですが、そこで突きつけられるのが女性が物を書くことへの世間の冷たい視線です。
- 10:40さらに友のおじさんのジェーンへの態度もひどかったですよね。
- 10:45才能があることはわかっている、でも女性だからという嫌な空気ですね。
- 10:52この少し前の回でご紹介した映画『秘密の花園』なんですが、
- 10:59あの物語を書いた作者バーネットも女性作家であることへの好奇の目にずいぶん苦労したと言われています。
- 11:06時代は違えど女性が書くことへの風当たりは同じですね。
- 11:12そしてここを見るとジェーンがなぜ匿名で出版したのかも不に落ちます。
- 11:18もしジェーンが結婚していたら夫から書くことをやめるように言われていたかもしれないですし、
- 11:25子育てと家庭をけりもりしながらあの小説は生まれなかったかもしれない。
- 11:31結婚しなかったこそがあの作品たちを生んだ、そう思えてくる場面です。
- 11:37そして最後はやはり邸宅ですね。
- 11:41映画の中で架空の人物レディ・グレシャムという高慢と偏見の中で出てきたキャサリン夫人みたいな女性が登場します。
- 11:52こちらは自分の老いをジェーンと結婚させたいと思っている人です。
- 11:57彼女の邸宅が本当にうっとりするほど素敵でした。
- 12:02こちらについては次回の放送でたっぷりお話ししたいと思っています。
- 12:08さて今日は2007年の映画、ジェーン・オースティン秘められた恋をご紹介しました。いかがだったでしょうか。
- 12:17最後にお知らせです。
- 12:19今日お話ししたようなイギリスのドラマや映画に登場するお屋敷を楽しむオンラインお茶会を開催します。
- 12:27第4回目となる今回のテーマは絵画とカントリーハウス、お屋敷の壁に秘められた絵画のルールです。
- 12:35イギリスのカントリーハウスを訪れると壁には数え切れないほどの肖像画や風景画が飾られています。
- 12:43そこにはなぜそんな絵画、なぜそんなところに飾るのといったお屋敷ならではの面白いルールのようなものがあるんですね。
- 12:52今回はそんなお屋敷の壁に隠された物語を写真や絵画を見ながら皆さんと一緒にひも解いていきたいと思います。
- 13:00ドラマのシーンに映り込む壁の背景についてもその裏側をご紹介したいと思います。
- 13:06美術の知識がなくても全く大丈夫です。
- 13:10そんな見方があるんだなという発見をお茶を飲みながらゆったりと楽しむ時間です。
- 13:15ぜひお気軽にご参加ください。
- 13:19開催日は4月11日の土曜日夜8時から9時です。
- 13:24申し込みの締切は4月4日です。
- 13:28詳細は番組の概要欄をチェックしてみてください。
- 13:33次回は今日ご紹介した映画に登場したレディ・グレシャムの素敵な邸宅と庭園のロケ地についてたっぷりお話したいと思っています。
- 13:44どうぞお楽しみに。