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1995年夏:HP200LXに「時記」で打ち込まれたテキストがいま語るもの

1995年、僕らは「未来」の入り口に立っていた:HP200LXと蝉の声が交差する夏1. イントロダクション:猛暑とモデムの音を覚えていますか?

1995年(平成7年)8月、日本は異様な猛暑に包まれていました。日記に「今日も朝からピーカン(8月1日)」と記されるような雲一つない空の下、私たちはアナログな日常の極みにいながら、同時にすぐそこまで来ているデジタルな未来に、ひりつくような渇望を抱いていました。

それは、インターネットが一般に普及する直前の、独特な熱気を孕んだ「前夜」の記録です。蝉が「をんをんする感じ(8月3日)」で鳴き、夕暮れには愛宕参りを欠かさない静かな生活の裏側で、私たちは手のひらサイズのコンピュータを駆使し、電話回線の向こう側にある未知のネットワークへと繋がろうとしていました。

当時のモバイルユーザーにとって、米ヒューレット・パッカード社の「HP200LX」は単なるガジェット以上の存在でした。この小さなマシンを「日本語化」し、さらに処理速度を上げるために本体を分解して「倍速化(クロックアップ)」を施すことは、一種の儀式のような熱狂を伴っていました。

失敗すれば高価なデバイスがただの箱と化すリスクを承知の上で、ユーザーは水晶振動子を付け替える「ハッカー精神」を発揮していました。それは、メーカーの保証を超えて、自分たちの手で「未来」をたぐり寄せる行為でもあったのです。…

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