Latest / TanaRadio / 84 ブログ | NHKBS「“原爆の父” オッペンハイマー」感想の続き
Transcript
- 0:01NHKBSで放送されたドキュメンタリー番組「“原爆の父” オッペンハイマー」の感想の続きです。
- 0:11先ほど、はじめさんがLISTENで配信しましたこの番組の感想を聴きました。
- 0:23そこで、はじめさんは、このようにおっしゃっていました。
- 0:28オッペンハイマーは、矛盾に満ちた人物のように言われているけれども、そうではない。
- 0:38むしろ、オッペンハイマーが生きた世界の方が矛盾に満ちていて、
- 0:47オッペンハイマーはそれに対して、一貫して誠実に対応しようとした。
- 0:55そのようなご意見だったと思います。
- 0:58私もそういう観点で見ますと、確かにオッペンハイマーが生きた時代と言いましょうか、
- 1:09これは今でもそうなんですけれども、原爆、核兵器というものが生まれた後の時代というのは、
- 1:17ある種の矛盾があって、その矛盾を解決できないまま、今に至っているという感じがします。
- 1:27その矛盾に最初に気づいたのは、やはり原爆開発に携わった科学者たちで、
- 1:36その矛盾をどのようにするか、その矛盾に満ちた世界をどうするかということで、
- 1:47それぞれが考え、行動していたと思います。
- 1:52オッペンハイマーもオッペンハイマーなりのやり方でそれをやったと思うんですね。
- 2:02このことについて少し詳しくお話ししてみたいと思います。
- 2:07まず、核兵器が生まれた後の世界の矛盾というのは何かと言いますと、
- 2:18まずは第二次大戦中のことについて考えてみたいんですが、
- 2:26当時はナチス・ドイツがありまして、そこが原爆開発をしているということは、
- 2:36多くの科学者によって知られていたし、それを非常に脅威に感じていたわけですよね。
- 2:46もしナチスが原爆を持ったらば大変なことになると考えたわけです。
- 2:54そしてそれに対抗するにはどうすればいいかというと、いわゆる核抑止力、
- 3:02すなわち核を持って、それによって相手を威嚇することによって核を使わせなくする、
- 3:12それしかないというふうに考えまして、アメリカの科学者たちも進んで原爆開発に携わったわけですね。
- 3:24オッペンハイマーもその一人だったと思います。
- 3:28しかしこの核兵器というのは、使われてしまうと非常に大きな被害を出すということも、
- 3:38これは原爆というものが構想された時点で科学者たちには予想されていました。
- 3:47ですのでこれはあくまでも抑止力として使うべきもので、戦争で使ってはならない兵器だという認識だったと思います。
- 3:58それでそのことをしっかりと政治家たちに伝えて、第二次大戦でも日本に対しても原爆を使わないようにというふうに進言した科学者たちもいたわけです。
- 4:20もし原爆を使うならば、それは無人地域である種の技術的デモンストレーションとして爆発させ、それを連合国の代表が見て、
- 4:39このような兵器は戦争では使えない、だからこれを国際管理していくべきだと。
- 4:46そういうことで原爆を戦争で使わないままその後の国際秩序を作っていく。
- 4:58当時は国際連合というものが作られつつありましたので、連合国の中でそのような原爆の扱いをするようにというふうに考えていた科学者たちはいました。
- 5:13しかしオッペンハイマーは、大体はそういう考えだったんですけれども、やはり原爆開発の中枢にいて、また軍人や政治家たちとも近い距離にいたということで、
- 5:30この戦争を終わらせるためには、この戦争というのは日本との戦争ですが、原爆を使う必要があるだろうと、そういう考え方を持っていたと思います。
- 5:46やはり原爆の威力というものは、実際に戦争で使われてみないと、一般の人というのでしょうか、科学者以外の人ということですが、にはわからないだろうと。
- 6:02特に政治家にそのことをしっかりと認識してもらうためにも、戦争で使われる必要があるというふうに考えていたんだろうと思います。
- 6:15しかし、それはもう日本との戦争で使うのを最後にして、その戦争が終わったらば、他の科学者と同じように、これは国際管理して使われないようにする、そういう考えを持っていた。
- 6:37しかも、オッペンハイマーは、自分は政治家と近い距離にいるので、政治家を説得して、そういう世界が作れるというふうに思っていた。
- 6:50トルーマン大統領に会ったときも、そのことを話そうとして会ったのではないかと思うんですね。
- 6:59しかし、ある種の失言をしてトルーマンを怒らせてしまった。
- 7:05そのときにオッペンハイマーは、政治家と協力して、核兵器が使われないような世界を作るということがかなり難しいということを悟ったのだと思います。
- 7:23それでもオッペンハイマーは、できる限りのことをしようとして、原子力政策にできるだけ関わりたいと思ったのではないでしょうか。
- 7:41それをできなくするセキュリティ・クリアランスの剥奪というものですね、
- 7:52これは受け入れ難い。原子力政策にいつまでも関わっていたいという希望があって、
- 8:02その聴聞会にも出席し、自らの嫌疑を晴らそうという考えもあったのではないかなと、私などは思います。
- 8:17けれども再度そこでは、オッペンハイマーが全く望まない方向で話が進み、
- 8:29オッペンハイマーとしてはアメリカに忠誠をずっと誓っている、それはもう自分でも全く疑いようがないわけですけれども、
- 8:40それを否定されて、全ての希望を失ったという感じになったのではないかなというふうに思うんですね。
- 8:50確かにこれは、はじめさんが言うように、オッペンハイマーはその時その時で、
- 8:58その状況にあった最善と思われる行動をしようと努力していたという気が私にもします。
- 9:08ただちょっとオッペンハイマーはやはり甘かったのではないかなと、
- 9:15政治家に対する見方とかですね、そういうところがですね、
- 9:25自分が説得すれば何とかなるというふうに思った、これはある種の自信過剰かもしれませんが、
- 9:36そういうところもあったのではないでしょうか。
- 9:39特にオッペンハイマーは人と話す時にですね、自信たっぷりに話すところがあったようです。
- 9:48それが多くの人を怒らせてしまう原因にもなった、ストローズとの対決というんでしょうか、
- 9:56それもそんなところから来ていたのかもしれませんね。
- 10:01ノーラン監督の映画でもそういうふうに描かれていました。
- 10:06ですので、もうちょっとですね、世間に対するというか、社会とかあるいは人の心とか、
- 10:17そういうところに対する洞察力、そういったものがあればですね、
- 10:24また違った行動にもなり得たかなというふうに思うんですが、
- 10:31やはりオッペンハイマーのキャラクターからすると、ああいう感じになったのかなということで、
- 10:45これは本当に人によって見方がいろいろだと思うんですが、
- 10:50よくやったというふうに評価する人もいれば、愚か者だというふうに評価する人もいるだろうし、いろいろだと思います。
- 11:00私は両方感じるんですけどね。そんな感じで学生にも教えていまして、
- 11:12みなさんはどう考えますか、という感じで意見をいろいろ言わせて授業をやっていますけれども。
- 11:20ということで、オッペンハイマーのドキュメンタリー番組に対する感想の続きをお話ししました。
- 11:31それではまた。