
「お父さん、カブトムシなんで死んじゃったの? 」
「老い」は人類に与えられた特権だった。生物学者が語る、死と長寿の驚くべき正体
夏休みの終わり、飼っていたカブトムシが次々と動かなくなっていく様子を眺めていた一人の少年が、父親に素朴な問いを投げかけました。
「お父さん、エサもちゃんとあげていたし、怪我もしていないのに、なんで死んじゃったの?」
父親は、東京大学で「老い」を研究する小林武彦教授でした。専門家として、関節の体液が固まって動かなくなるといった「生理学的なメカニズム(機能)」は説明できても、少年が求めていた「そもそも、なぜ生き物は死ななければならないのか」という「意味」に、その時は十分に応えることができませんでした。
私たちは「死」を、生命という精巧な機械が壊れて動かなくなる「故障」や「敗北」のように捉えがちです。しかし、生物学の深淵に触れるとき、そこには高度な進化的論理に裏打ちされた、驚くほどポジティブな戦略が浮かび上がってきます。本稿では、最新の科学知見と東洋の智慧を交え、人類が「老い」という時間を獲得した真の正体を解き明かしていきます。
まず、私たちの直感を覆す科学的事実を提示しましょう。「死は単なる故障ではない」ということです。…
The skinny
The skinny isn't ready yet — notes appear once the transcript is processed.